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パダワンとはスターウォーズに登場する戦士で、修行中の身の戦士の事です。私の仕事の車に関係する”ガレージ”を付け、初心に返る意味で、屋号にしてます♪


by deshi-mie
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15. 噂

朝のホーム。
今だ続いている連続飛び込み事件に、人々は見知らぬ恐怖に取りつかれていた。

「おい、この雑誌読んだか?」
一人の男が、別の友人に話し掛ける。
「いや、何で?」
知らないのかよ?と言いたげな表情で、
「連続飛び込みの噂だよ。」
友人は興味ありげに雑誌を見る。そこには、こう見出しがあった。
「連続飛び込み自殺!その正体は呪われた携帯!!」
と書いてあった。
「なんだよ。オカルトか?」
馬鹿にした様に友人が言う。
「まあ聞けよ。全部の被害者の携帯が、real製だってよ。お前のもじゃなかったけ?」
馬鹿な男だと思い、友人は慰めるようにいった。
realとは、ジャパン・データ・ソフトの携帯ブランドの名称である。
「お前ね。同じ携帯だからって、死ぬわけ無いだろ。大体さ、realって言ったら、今携帯の最先端行ってるから、結構大勢持ってるんじゃないの?」
「いや、それがさ。」
現実的な友人に、すぐさま反論する。週刊誌の内容を鵜呑みにするタイプだ。
「realって携帯メーカーのジャパン・データ・ソフトじゃん。そこの最大の売りの、大容量通信システムを開発した一人がさ、他社に情報を流したって疑われてクビにされちゃったらしくて、恨んで電車に飛び込み自殺したらしいんだよ。」
あっけにとられる友人。
「それで?呪いとかそんな感じって事?」
「正解!その通り。それでrealのユーザーを狙って、線路に引き込んでいるって噂らしいんだ。」男は真顔で答えた。
「そんなの俺達にとっては、いい迷惑じゃん。」
もっともな意見だ。しかし、男は続ける。
「ユーザーを減らして、会社を呪い潰す目的らしいぜ。」
「お前さ。現実的に考え」
言いかけて、周りの声にかき消された。悲鳴、叫び、そしてざわめき。線路を挟んで向こう側のホームだった。
「だれか!また人が飛び込んだぞ!」
彼らも野次馬の一人として、現場に行った。全ては電車の下だった。

「おい、どっかに携帯落ちてないか見ろよ。」
男は言った。
「やだよ、そんなの。死体も見ちゃうじゃないか。」
こちらのホームにはまだ電車が着いていないので、反対側の列車は全て見渡せる状態だった。なにやら騒いでいる人達がいる。二人も言ってみる事にした。
「死体なんじゃないの?」
友人はおそるおそる人ごみの合間から覗いた。
「やっぱり、あの携帯だ。」
数人の人が口々に言っている。
彼らも、同じ雑誌を読んだのだろう。

「ほら見ろよ。やっぱりそうだ。」
友人に自慢気に言う男。
「まじかよ。」
さすがの友人も驚いた様子だった。

その日以来、噂は全国に広まっていった。
by deshi-mie | 2005-06-20 13:50 | 小説 第ニ章