パダワンとはスターウォーズに登場する戦士で、修行中の身の戦士の事です。私の仕事の車に関係する”ガレージ”を付け、初心に返る意味で、屋号にしてます♪


by deshi-mie
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<   2005年 06月 ( 51 )   > この月の画像一覧

14. ネタ

「佐々木。届いてるか?ビデオ。」
村松は出勤するなり佐々木に言った。
「はい。来てますよ。」
親指を立て、O.Kの仕草をして佐々木が答える。
このビデオで確信が持てる。二人は急いで再生を始めた。

しかし、またもやカメラの角度の関係で、二人が必要としている物は映っていなかった。
「くそカメラめ!」
村松は叫んだ。せっかくの手掛かりも、これではまだ偶然の域を出ない。
「くっそー!」
佐々木もまた叫んだ。
「願ってはいけないが、次の事故までお預けだな。」
村松は、不謹慎な事とは分かっていても、この事故はまだ続いていくと確信していた。

「ちょっと周りを当たって来ます。」
どうにも落ち着かない佐々木が言った。
「俺も行こう。」
村松もまた、じっとしていられなかった。

連続する飛込み自殺に、警察もマスコミも本腰で動き出した。村松達の捜査の結果も未確定だが発表された。
こうなると、マスコミも独自の調査で色々と調べ回った。
村松達が捜査に力を入れている間にも、ほぼ毎日のペースで事故は起こった。

村松たちは署で、最近のビデオをチェックしていた。
「やっぱりですよ、警部。」
そう言って、佐々木は画面を指差した。
「間違いないな。」
村松も確信した。残りのビデオの半分以上に、被害者が携帯を持ったまま飛び込む姿が映っていたからだ。
「おい、上に報告して来い。」

村松は一つの手掛かりを見つけた。しかし、何故携帯を持っているのかは分からなかった。直前に誰かから電話があったのか?そんな推理をしてみた。村松は、もう一度ビデオをチェックする事にした。何度も見直したビデオの山。しかし、今は憂鬱な気分ではなく、何かを見つけてやろうと勇んでいる気分だった。

「良く見えないな。」
歩き出す前の被害者は、人ごみの中に埋もれており、単独で歩き出すまでは様子が伺いにくかった。
「誰も携帯を耳にあててないな。しかし、皆うつむいてるぞ。既に死ぬ気か?」
確かに、列から前に歩き出すまでの間、誰一人として携帯を耳にあてている者がいなかった。
「ちっ、思い過ごしか?」
予想が外れた事で、さっきまでの勇んでいた気持ちがダウンしていた。

「警部、上に報告して来ました。しかし、携帯でどうやって殺すんだ?って言われて・・・。」
佐々木の報告は、今の村松には痛い一言だった。
「ああ、俺も誰かの電話でこんな行動を取ったのかと思ってな。占い師とか。調べてみたんだが・・・。誰も耳に携帯をあてていないんだ。」
村松がテンション低そうに答える。
「あ、でも、耳にあてなくても今の携帯は話せますよ。」
佐々木がさらっと答える。
「本当か?」
村松が驚いて佐々木の顔を見る。村松はほとんどテレビや雑誌を見ない。自分の携帯の使い方も良く理解していない、俗に言う機械音痴なのだ。
「じゃあ、俺の携帯もか?」
村松が携帯をポケットから取り出して見せる。
「あ、これはモデルが古くてだめですね。」
佐々木は何気に言ったが、村松は馬鹿にされた気分だった。
「それじゃ、お前のはどうなんだよ?」
ぶっきらぼうに村松が返す。
「あ、僕のは出来ますよ。やってみますか?」
そう言って佐々木は村松に電話した。
「もしもし。聞こえますか?」
佐々木が話す。
「ばかかお前。そんなに近くじゃ直接声が聞こえるんだよ。廊下の端に行け!」
まだ、馬鹿にされたと根に持っているらしい口調で言った。佐々木はしぶしぶ廊下の端へ行き、再度電話を掛けた。
「今度はちゃんと聞こえますか?」
遠くから見ても、確かに佐々木は耳にあてていない。
「おう、聞こえるぞ。そのまま外に出て、俺の部屋の下に来い。」

村松は、騒がしい外での通信状態が知りたかった。村松の部屋の下。それは車道の横だった。
「今から署の外に出ます。」
佐々木は軽快に話していた。
「聞こえるか?」
村松の声が佐々木の携帯から聞こえる。
「聞こえますが、ボリュームを上げないと少し聞きづらいですね。」
しばらくして、返事が来た。
「おい、聞こえるのか?」
「ええ、でもこんなに大きくしたら、周りの人にも聞こえてしまいますから、人ごみでは、」
言いかけた所へ、またも村松の声
「何か騒がしくて聞き取りにくいぞ。もっと大きな声で話せ。」
村松には聞こえていなかったらしい。佐々木は普通の通話に切り替えた。
「警部。良く聞こえていないみたいでしたね。」
「おお、急に良く聞こえるようになったぞ。」
事情が分からない村松は答えた。
「いえ、今、普通の話し方に切り替えました。警部が聞き取り辛そうでしたので。」
「なんだ、そうか。何か周りがうるさくってお前の声が聞き辛かったんだ。もう、帰って来ていいぞ。」
そう言って村松は電話を切った。

「だめだな。さっぱり聞こえない。」
村松は新たな手掛かりが消えた事に悔しさを感じていた。そこへ佐々木が戻って来る。
「警部。人ごみの中で、相手の声が聞こえるまでボリュームを上げて話す人なんかいますかね?」
佐々木が諦めた顔で言う。
「こっちなんか、ほとんど聞こえないぞ。もっと大きな声でしゃべって貰わないと。」
二人の感想で、駅のホームでは使えないと判断した。
「何かないですかね?」

二人が悩んでいる頃、週刊誌の記者が、あるネタを掴んだ。
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by deshi-mie | 2005-06-20 13:29 | 小説 第ニ章

13. 希望

署に戻った村松は、早速ビデオをチェックし始めた。
「佐々木が帰って来たら驚くだろうな。」
心なしか少しテンションが上がっていた。何か見つけられそうな気がしていた。
「四人の周りの人物に、共通点はないのか?」
どのビデオも、ひとりでに歩いてホームの下に消えて行く、被害者の映像が映っているだけだった。

「どんな小さな事でもいいんだ。見つけろ。」
いつしか村松は自分に言い聞かせていた。そこへ佐々木が帰って来た。すぐに村松は、
「佐々木。今度の被害者も占いに凝ってたぜ。」
少し笑みを浮かべながら言った。
「本当ですか?それって、マジもんの共通点って事ですかね?」
佐々木もまた、興奮して言った。
「まだ分からんがな。お前の感が当たっているかもしれんぞ。ところで、他は何か分かったか?」
「いえ。他は何も。手掛かりありませんね。」
疲れた様に佐々木が答える。
「もう一度、ビデオと調書をチェックするんだ。きっと何かあるはずだ。今度は俺が調書を見てみる。」
そう言って、村松は調書をめくり始めた。

そんなに多くない調書とビデオ。時間も掛からずチェックは終わった。
「どうだ?何か怪しい事でもあったか?」
村松が尋ねる。
「いいえ。これといって共通人物もいませんし。やっぱり、占いか何かですかね?」
二人は煮詰まってきていた。
「そうだ、四つのモニターで同時に見てみましょうよ。何か分かるかも知れない。」
ふと思いつきで佐々木が言った。
「そんなんで何か分かるのか?」
疑問に思い村松は聞いた。
「分かりませんけど、何かした方がいいでしょう?」
佐々木も思いつきで言ったので、これといった答えは持ち合わせていなかった。
早速モニターを用意して、ビデオを再生する。

「何だか、何度も飛び込みの瞬間を見るのって、気分が悪いですね。」
佐々木が滅入った様に言う。
「仕事だから仕方ないんだよ。」
もう何十回とこのビデオを見た村松が、諦めた様子で答える。
「ん?もう一度全部戻してくれ。」
村松が慌てて言った。
「何かあったんですか?」
佐々木も慌ててビデオを戻しながら聞いた。
「ちょっと、ここ見てみろ。」
村松が指差したのは、被害者の手だった。
「え、どこですか?手ですか?」
佐々木も身を乗り出して、被害者の手を注視した。
「ほら、見てみろ。これも、これも。これはちょっと見難いが。ほら、これも。三人ははっきり見えるだろ?」
村松は興奮を抑えきれない様子だった。さすがに佐々木も気付いた。
「あ!みんな手に携帯を持っている。」
そう、四人中三人は、はっきり手に携帯が見て取れるのだ。残念ながら、一人はカメラの角度の関係で見えなかった。
「今日の夕方の事故のビデオが来れば、確信が持てそうだぞ。」
まだほんの少ししか謎が解けていないが、もう一つのビデオに、希望の光がある事を信じていた。
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by deshi-mie | 2005-06-20 13:18 | 小説 第ニ章

12. 共通点

後日、調書とビデオが村松のもとへ届いた。
「おい、この中に同じ人物がいないか調べるんだ。調書は偽名の可能性もあるから、何か手掛かりになりそうな事を見つけろ。」
この中に必ず犯人の手掛かりになる物がある。村松はそう確信していた。

じっと画面を見つめる村松。何度も繰り返し繰り返しチェックするが、同じ人物らしき姿が見当たらない。わずか4本のビデオなのに。
「くっそー。何故いないんだ。変装でもしてるのか?やはり自殺なのか?」
苛立つ村松を佐々木がなだめる。
「警部。遺留品でも当たってみますか?何か犯人の手掛かりになりそうな物があるかもしれませんよ。ついでに、解剖の結果も見てみましょう。」
自分の予感が外れそうな事、部下に慰められている事、全てが情けなく思う村松だった。
「ああ、じゃあ俺は解剖の結果を調べるから、お前は遺留品を頼む。」
力が抜けたように村松が言った。
「何かあったら、すぐ連絡しますから。」
佐々木もこれ以上何も出ないと思ったが、村松を気遣って答えた。

解剖結果を聞く村松。
「そうか、薬物なんかも出ないか。普通にただの健康な体か。」
残念そうに村松がうつむく。
「外傷に関しましては、遺体の損傷が激しくて・・・。」
「そうか、有り難う。」
そう言って村松は部屋を出ようとした。そこへ電話が入った。佐々木だった。
「あ、もしもし。佐々木です。遺留品は駄目でした。これといって手掛かりになる様な物は・・・。あ、でも被害者の周りを当たってみたら、関係あるか分かりませんが、一つだけ共通点がありました。」
今の村松にはどんな手掛かりでも嬉しく思えた。
「何だ?早く言え。」
「ええ、本当に関係があるか分かりませんが、みんな占いに凝ってました。」
「何?占い?そんなもん誰だってやるだろう。本当に関係なさそうだが、もう少し調べてみてくれ。」
村松は、期待していた返事よりかなり外れていた為、がっくりと肩を落とした。占い?たまに変な占いで自殺する奴はいるかも知れないが、今回はもう4人だぜ。それとも、何か宗教まがいのマインドコントロールか?俺もテレビの見すぎかな。頭の中で色々な事が巡ったが、これといって解決策は思い浮かばなかった。

「帰ってもう一回ビデオでもチェックするか。」
独り言を言いながら、村松は車に乗り込んだ。
夕日が眩しくてサングラスを取ろうとした所で、またも無線が鳴った。
「代々木駅で男性の飛び込み事故発生。至急・・・」
「おいおい、またかよ。何が原因何だ?」
村松は謎だらけのこの事件に怒りにも似た気分だった。

夕方のホーム。学校や会社帰りの人でごった返していた。
「どうだ?」
いい加減同じ答えしか返って来ない現場に、少々いらついて、ぶっきらぼうに問いかけた。
「はい。二十五、六の男性ですが、同僚と一緒だった様で。あちらの男性です。」
意外な答えに村松は嬉しかった。何か手掛かりになる事が聞けるかも知れない。
「すみません。私、警部の村松と言います。」
同僚の男性は、かなり動揺した様子で、
「あいつが、あいつがいきなり歩いて。それで、止めようとしたけど・・・。そのまま歩いてって。」
また同じ状況だった。
「その時何か変わった事はありませんでしたか?誰か近くに居たとか?」
男性は村松を見上げていった。
「誰か?周りは電車待ちの人でいっぱいでしたよ。え、誰かに押されたって事ですか?殺されたんですか?どうなんです?そうなんですか?」
男性は村松の言葉にさらにパニック状態に陥ってしまった。
「いえ、すみません。とりあえず、色々聞いておかないといけませんので。申し訳ない。」
そう言って頭を下げた。これじゃ今日は無理だな。そう思い、署に戻ってビデオをチェックしようと思った。
「じゃあ、こちらの男性の事頼んだよ。」
そう警察官にいうと、階段の方へ向きを変えた。そこで、佐々木の言葉が頭を過ぎった。村松は振り返り、
「最後に一つだけ。同僚の方は占いが好きでしたか?」
男性は、思いもよらない質問に少し驚いたようで、
「なんですかこんな時に。ええ、確かにあいつは占いに凝ってましたけど。それが何か関係あるんですか?」
村松はニヤリとしたかったが、何とか持ちこたえた。
「いや、何でもない。変な事聞いてすみませんでした。」そ
う言って現場を後にした。
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by deshi-mie | 2005-06-20 13:12 | 小説 第ニ章
友助たちのお見合いの日から約二週間後。
ホームにはロープが張られ、警察・救急隊が慌しく動いていた。
「近づかないで、離れて下さい。」
駅員も周りの野次馬の整理に追われていた。
「いや、急に後ろから歩いて来たと思ったら、そのまま・・・。」
前の列にいた人が事情聴取を受けている。
「俺も携帯が鳴ったから、ポケットから出そうとしてたら、いきなり前に出てきて。」
被害者の横に居た学生が動揺しながら答えた。
救急隊がシートを被せてタンかを運ぶ。
「即死だろうな。」
一人の警部が呟く。
「自殺でしょうか?」
部下の一人が聞いた。
「まあ、周りの証言からすると、自殺の可能性が高いな。」
警部がうつむき加減で答えた。
「後はまかせて戻ろう。」
胸の前で手を合わせて、ホーム中央の階段を下りていった。

事故から二日後。
「村松警部。また飛び込みですよ。」
部下の佐々木が喫煙所でタバコを吸っていた村松の所へ走って来た。
「また飛び込みか。今度はどこだ?」
「今度は新宿です。」
佐々木が答える。
二人は急いで現場へ向かった。
現場の様子は前回と同じく騒然としていた。
村松は、先に事情聴取をしていた警察官に様子を聞いた。
「どんな感じだ?」
「はい。二十歳過ぎの女性みたいですが、誰に聞いても自分から飛び込んで行ったと。電車が入ってくる直前に、急に前に歩き出したと証言しています。」
警官は、調書を村松に見せた。
「また自殺かな。最近続くな。皆そんなに悩んでるのか?」
村松は、なんなんだ?と言うような表情で呟く。
「何か新しい事が分かったら連絡してくれ。」
村松はそう言って、手を合わせて帰って行った。

さらに次の日。
「村松警部。今度は男性の飛込みです。場所は原宿です。」
また佐々木が叫びながら部屋に入ってきた。
「おいおい、どうしたんだ?最近多くないか?」
立て続けに起こる飛び込み事件。村松も何か嫌な感じを拭えなかった。
二人は現場へ向かった。
途中、車の中。無線が飛び込んできた。
「新たに新宿駅で女性の飛び込み事故発生。近くの者は現場に急行。」
「うそだろ?」
佐々木が驚いて叫ぶ。
「おい、何かおかしくないか?」
村松が問い掛ける。
「確かにおかしいですね。最近続いてますし。」
佐々木も疑問を持っていた。
「もしかすると、自殺じゃなく他殺かも知れんな。」
その言葉に、佐々木はじっと村松の顔を見つめた。
「連続殺人事件・・・って事ですか?」
木村の問いに
「俺たちの気付かない誰かが、同じ現場にいるんじゃないか?」
村松の口から出た言葉に即座に佐々木が反応する。
「それじゃ、最近の事故は全部そいつの仕業と?」
慌てた様に佐々木が話す。
「いや、俺の推測だが。」
何の確信も無い村松は、言葉を濁した。

現場に到着した村松は、警察官に尋ねた。
「どうだ?」
調書を見せて警察官は答えた。
「断定は出来ませんが、自殺の様です。今回は三十歳前後の男性です。自分で飛び込んだと皆言ってますので。」
「調書を俺の所にファックスくれないか?」
村松は自分の直感を信じたかった。次に村松は構内の防犯ビデオを見に行った。
「このビデオ預かってもいいかな?」
駅員は、ビデオを差し出した。
「佐々木。他の事故の調書とビデオを集めとけ。」

村松には、どうしてもこの事故が自殺とは考えられなかった。
何か別に原因があるはずと、村松は思わずにはいられなかった。
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by deshi-mie | 2005-06-20 13:03 | 小説 第ニ章

10. 計画

木村は社長室にいた。また経費の件で呼ばれたのだった。
「それじゃ、そう言う事で頼んだよ。皆に言い聞かせてくれ。君しか出来ないんだよ。」
いつも同じような事ばかりなので、最近はほとんど聞いていない。
「ところで社長。私の話、由香さんにして頂けました?」
いきなり本題に入った。
「ああ、その件ね。由香は昨日お見合いしてね。相手はジャパン・データ・ソフトの成田君だよ。知ってるだろ?息子だよ。君には残念だが、結婚すれば開発費もあちらから出るから、君も思う存分開発に取り組めるぞ。」
そう言って満足そうに笑った。
「それって、政略結婚じゃないですか。由香さんが可哀相ですよ。」
善人ぶって木村が言った。
「心配いらんよ。二人とも意気投合して、結婚を前提に付き合う事になったんだ。」
一番聞きたくない事を聞いてしまった。俺の計画、俺の計画。心の中で木村は叫んでいた。計画を邪魔された怒りでいっぱいだった。
「そうですか。それでは仕方ありませんね。」
そう言って社長室を後にした。それからトイレの大便器の蓋に座り考えた。
この計画を成功させるには・・・。
計画を復帰させる新たなこの計画の始まりは、実は少し前の別の事がきっかけで、既に考えていた。
「ようし見てろよ。早速計画は実行だ。フッフッフッ。一石二鳥じゃないか。俺を甘く見るなよ。」
怪しげな笑みを浮かべて、木村は席に戻った。
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by deshi-mie | 2005-06-20 12:57 | 小説 第一章

9. お見合い

都内の料亭で裕介と由香のお見合いは開かれた。
「後は若いもの同士でね。」
お決まりの文句だ。二人はお決まりに庭園を歩く。

「すみません。親が勝手にお見合いなんか組んじゃって。彼氏とかいるんじゃない?」
友助が気さくに話し掛ける。
「いえ。今は彼氏もいないの。親がうるさくって。」
お見合い前とは友助に対する感情が微妙に違う由香。何度か逢った事はあったが、話すのはほとんど初めてで、顔もいけてるし、今は彼氏もいないし、お付き合いもいいかなと思っていた。バッグ目当てで承知したお見合いだが、別に親に従ってる訳ではないと、自分になりに解釈していた。
「友助さんは彼女とかいないの?」
気になって由香が問いかけた。
「今はいない。それより、正直俺って相手にならない?」
友助もまた、最初は未松から逃れる為の口実だったが、今は由香の綺麗な容姿とかわいい言葉遣いに惹かれていた。正直、亜由美よりいいと思っていた。
「そんな事ないわ。まだ良く分からないけど・・・。ちょといいかなって。」
言った後で少し照れた仕草の由香も、また友助にはキュンときた。

メル友の亜由美もちょっといいと思ったが、やっぱりこっちの方がかわいいし、金も掛からなそうだし、と言うよりもおごってくれそうな気がした。ついでに借金も・・・。
前の彼女がトラウマになりかけていた。自分も社長の息子だと見られている事など全く考えていなかった。頭の中で、悪魔がG.O!サインを出した。
「じゃあ、付き合ってみようか?」
友助もかなり照れた風に言った。
「うん。」
言葉にハートマークが付くほどかわいい返事に、本気で友助はダウンしそうだった。
「じゃあ俺、親父に報告して来るよ。」
友助は、由香の気が変わらないうちにと、親達がいる部屋へ向かった。

「おしっ!」
由香は元々気が強い女。今日はちょっと女の子チックに振舞ってみた。
作戦勝ちである。さすが親子。
友助も思い通りに事が運んで、どっちもどっちだった。
しかし、この結果がこれから起こる事件のスイッチだった。
 
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by deshi-mie | 2005-06-20 12:54 | 小説 第一章

8. 占い師

またいつものホテルのロビー。
友助は相変わらずの格好で待っている。
メールを知らせる音がする。未松だった。
「1112」とだけ書いてある。いつも通りエレベーターで上がって行く。
「今日が最後だ。今日が最後だ。」
ぶつぶつ独り言を言いながら上がって行く。

「絶対言うぞ。断るぞ。でも何て言おう?この前は彼女って言っても動じなかったしな。」
また携帯が鳴った。
親父からのメールだった。
「言い忘れていたが、来週の日曜日はお見合いだ。用事を入れるなよ。たまには顔を出しなさい。」
友助は意味が解からなかった。お見合い?俺が?何で?疑問符ばかりが頭を過ぎる。
その中で、ヒラメキの電球が点いた。
「これで行こう!」グッドタイミングの親父からのメールに感謝した。友助が部屋の前に着いた。

大きく息を吐いて深呼吸し、ノックをした。
静かにドアは開き、友助は中に入って行った。
「さあ、目隠しだ。」姿の見えない未松の声だけがする。
いつも、部屋は真っ暗。未松が目隠しを後ろ向きで渡し、友助が目隠しをした後で未松は振り向く。
未松は既にシャワーを浴びた後だった。
「話もあると思うが、まずは仕事だな。」
そう言って友助の服のボタンを外し始めた。
友助は、今回までの辛抱だと自分に言い聞かせていた。金も必要だし、なにより綺麗に終わらないと、危ない気がしてならなかった。

未松は友助のGパンを下ろし、そこに顔をうずめた。
そして、友助の手をつかみ、自分のガウンの中へ入れた。
「今日も楽しませておくれよ。」
未松が気持ちを抑えきれない様子で囁いた。
二人はベッドに入って行った・・・。

数時間後、またいつもの時間になって、未松が服を着始めた。
友助は今日は寝なかった。寝ている間に帰られたら終わりだからだ。
「未松さん。俺、今度お見合いするんです。それで前にも言った様に、終わりにしたいんです。お願いします。解かって下さい。」
友助は、必死に頼んだ。
「友助君。前回君に言われて考えたんだが、私の知り合いの会社に来ないか?君のお父さんの会社はもう長くないよ。給料は沢山用意出来ると思う。君を近くに置いておきたいんだ。私の正直な気持ちだ。私の正体も分かるよ。どうだね?」

意外な返答に友助は戸惑った。スカウト?俺が社長の息子と分かっていて?しかも会社は長くない?なんだそりゃ?友助の頭の中は、またも疑問符だらけになった。どういう事だろう?俺って囲われるって事?ますます逃げられないじゃないか。しかし、本当に潰れたらもっとやばい。借金が払えないじゃないか。
親の事より自分の借金。自己中心的な友助だった。

「何故、うちの会社が長くないんですか?今急成長中ですけど?」友助は問いかけた。
「私の知り合いの占い師が危ないって言ってるんだよ。」
未松は薄笑みを浮かべ答えた。そして、
「今のうちに私の所に来れば、君は助かるよ。君を不幸にしたくないんだよ。もう一つ、お見合いも止めた方がいい。悪い結果になる。君は今のままでいいんだ。」
「え、占い師?それだけですか?そんなもん当たる訳ないでしょ。お見合いもします。もうあなたとは逢いません。でも今日の分までは頂きます。」
友助は半ギレしながら、でも今日のバイト代は請求する。我ながら良く言えたと思った。
後は未松の返答次第。

「解かって貰えないか。」未松は残念そうに呟いた。
友助は目隠しをしているので、未松の表情も行動も読めない。このまま殺されたりしないよな?圧倒的不利な立場に気付き、少し後悔している。
「きっと後悔するよ。この占い師は呪いもかけれるんだよ。助けて欲しかったら、いつでも来なさい。」
そう言って未松は部屋を出かけた。

「あなたは一体誰なんです?本当は何者なんですか?未松ってのも偽名じゃないんですか。」友助が質問で呼び止めた。未松は優しく言った。
「お互い何も話さないのがここのルールだろ?まあいい。それじゃ、これだけ見せてやるが、上を向くなよ。ほら、目隠しを少しだけずらして見てみろ。」
そう言って、友助の前に何かを近づけた。上を見たら何をされるか分からない。友助はじっと差し出された物を見た。暗い部屋。だんだん目が慣れて来た。それは免許証だった、未松の両手の指で、名前以外の所は隠してあった。
「もういいだろ。私は正真正銘未松だろ?」そういい残して、未松は部屋を出て行った。
「殺されなくてよったぁ。本当に未松だったな。しかしなんだよ。呪い?んなもんある訳ないじゃないか。」
友助は少しほっとした。が、それもつかの間だった。
「あー!!あいつ金置いていってねーじゃん!」
いつも以上に疲れたが、今日はただ働きの友助だった。
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by deshi-mie | 2005-06-20 12:48 | 小説 第一章

7. 誤算

「この携帯の特徴はですね。」
友助はショップでお客に商品の説明をしていた。
そこへ友助の携帯が鳴った。
接客中は無視している。お客様第一がモットーである。
音からしてメールらしい。
「それじゃ、今日はカタログもらって帰ります。」

お客が帰ると、友助はメールを確認した。亜由美だった。あれから何度かメールは来るものの、まだ逢う約束はしていない。何より未松との事がまだ片付いていないからだ。
あれから1週間。全く未松から連絡が無い。そろそろ諦めてくれたのかな?いや、そんなに物分りがいいはずがない。そうだ、俺の親父の事も知ってたな。なんでだ?
友助は今日まで全く忘れていた。のんきな奴である。
「あ~ぁ。どうしようかなぁ。」
色々問題を抱えて面相くさくなっている友助に圭太が尋ねる。
「友助ってさ、男の俺から見てもなかなかかっこいいのに、なんで女いないの?作んないの?」人の苦労も分からずに気楽なやつだぜと友助は思った。
「ん~。今ちょっといいなって思ってるのがいる。」
「ほんとか?誰だよ?俺の知ってる奴か?」
いちいちうるさい奴である。
「いや、知らないよ。俺もこないだ逢ったばっかだもん。」
仕方なく返事をした友助に、またメールが届いた。未松だった。
「今日は逢えないか?」メールにはそれだけ書いてあった。友助は行きたくなかったが、話をしないと終わらないと思い、逢う事にした。

横ではまだ圭太が何か話しているが、それどころではないので、全く聞いていない。
「で、どうなんだよ?」圭太が聞いた。
「あ、ごめん。またバイトの依頼があったから聞いてなかった。」
「おい、いったい何のバイトだよ。この間はホストみたいなもんって言ってたケド。幾ら貰えんだよ。」
本当にしつこい奴である。
「そのうち教えてやるよ。」
教えるつもりもないが、とりあえずこの場をしのぎたい友助だった。

その頃木村は会社のエレベーターで由香と乗り合わせていた。
偶然ではない。由香の帰りの時間に合わせて待ち伏せしていたのだ。
木村が話し掛ける。
「社長から聞いてると思うけど、今日あたり食事でもどうかな?」
昼間の父親の話で、さらに悪条件になったとは知る由も無く、気軽に話し掛ける木村に、
「私、今度お見合いしますので、変な噂が流れると困りますので。」
木村は動揺した。結婚!?そんな話は聞いてないぞ。木村は動揺して、お見合い=結婚と思い込んだらしい。
「いつ決まったんですか?相手は誰ですか?」
由香からしてみれば、答えたくもなかったが、これでこの人も諦めてくれるのではと思い、
「ジャパン・データ・ソフトの社長の息子さんです。」
エレベーターが一階に到着した。降りて行く由香をエレベーターの中から見送る木村。
ショックを隠し切れない様子。
木村が降りないまま、エレベーターの扉が閉まった。
「それじゃあ、俺が社長になれないじゃないか。由香と結婚しないと駄目なんだよ。俺はこの会社のトップになるんだ。お前は俺の嫁になるんだ。ちぇ、あの社長も役に立たないなぁ。それに・・・。」
エレベーターの中で、木村は意味深げに呟いた。
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by deshi-mie | 2005-06-20 12:30 | 小説 第一章

6. 作戦

パソコンが騒然と立ち並ぶ部屋。その部屋の窓際に木村はいた。
木村の勤める会社は、最近急成長中のベンチャー企業で、大容量データ転送システムを扱う企業だ。
友助の父親の会社、ジャパン・データ・ソフトと技術提携しており、この会社のシステムをジャパン・データ・ソフトが独占契約した事によって、現在の携帯電話の中では、最先端をいっている。

今までのデータ通信では容量が足りなかった物を、このシステムを使えば、DVD並みの映像と音を送る事が出来る。携帯で、バーチャル5.1chサラウンドも楽しめる、世界初の携帯が誕生したのだ。
当然、市場での売上も、この携帯のお陰でジャパン・データ・ソフトが馬鹿売れし、あっという間に業界のトップにのし上がった。木村は、このシステムの開発チーフで、去年の暮れに莫大な契約金でヘッドハンティングされたのだった。

しかし、技術開発は日進月歩。もう他社がそれの上を行く技術を開発しているとの噂もあった。少し遅れをとっているこの会社には、開発資金が大手よりも少なく、なかなか開発が進んでいないのも現実だった。
木村は下からの開発資金増加と、上からの新商品早期開発の間に挟まれている状態だった。そんな木村がデータをチェックする横を、秘書の南城由香(なんじょう ゆか)が通った。彼女はこの会社の社長の一人娘である。ちょっと気が強いが結構な美女で、社内では彼氏候補に手を上げる者が多数いるが、木村もその一人だった。
木村は、社長直々にヘッドハンティングされた事で、良く社長と食事も一緒に行く仲だった。そこでは、遠まわしに娘の話を出し、密かに婿に立候補していた。由香もまた、父親から話だけは聞いていたが、木村をそんな風には見ることが出来なかった。悲しいかな、恋愛対象外だったのだ。

その由香は一番奥の社長室に向かっていた。
「失礼します。」ノックをし、中に入ると、社長である父が待っていましたとばかりに話し始めた。
「おお由香。お前お見合いしてみないか?」
突然の事に
「いえ、まだ私は結婚するつもりはありません。それにお見合いだなんて・・・。」
由香はびっくりし、また木村の事かと思った。
「なんだお前、好きな男でもいるのか?木村はイマイチみたいだったが、今度は気に入ると思うぞ。」
由香の予想と違い、木村ではなかった。誰?由香には想像がつかなかった。
「お前も知っていると思うが、ジャパン・データ・ソフトの友助君だ。どうだ?いい男だろう?ん?仕事も出来るらしいぞ。」
こちらの会社には、携帯ショップの一店員とは知らされていないらしい。由香も、会社の付き合いで何度か一緒に食事をした事があったが、あまり話した事もなかった。
「そういう問題ではありません。まだ結婚したくないんです。」
由香は25歳。仕事や遊びが楽しい彼女は、結婚の事など全く考えていなかった。
「実はな、これは私から先方にお願いした事なんだ。お前も知っていると思うが、うちには開発費が無い。木村からも経費を増やすようにひつこく言われているんだ。あちらと完全に手を組めば、向かう所敵なしだ。世界だって狙える。一度逢ってみてくれないか?」
由香は怒りに満ちていた。親ともあろう者が会社の為に娘を売っていいのかと。ドラマじゃあるまいし。馬鹿げていると。しかも木村まで関係しているのかと。
「お断りします。私はどうなってもいいんですか?あなたは社長である前に私の父親でしょう?そんな話お断りして下さい。」
ヒステリックに由香が言った。
「それじゃ、この会社がどうなってもいいと言うのか?私からお願いしたんだ。せめて一回でもいいから逢ってくれ。頼む.」
そう言って頭を下げた。
「一回でいいのね?本当に一回よ!絶対断ってよね。バッグも買ってよ。」
どさくさにまぎれておねだりもするしたたかな由香は、今現在、彼氏もおらず、気になる男もいない。初めて頭を下げる父親に一度位協力してもいいかなと思った。
「有り難う由香。本当に有り難う。助かったよ。バックでも何でも買ってやる。本当に有り難う。」
そう言って泣きそうな顔で由香に礼を言った。
「それじゃ、詳しく決まったらまた教え下さいね。」
そう言って部屋を出る由香。ちょっとお父さんてかわいいと思い、口元が微笑んでいた。
が、木村を見つけるなり、きつい目に変わった。

一方部屋の中では父親が、ドアが閉まるなり、泣きそうな顔から笑みに変わっていった。
父親の作戦勝ちのようである。
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by deshi-mie | 2005-06-20 12:22 | 小説 第一章

5. 何故?

数時間後、ベッドの脇で服を着る未松の姿があった。
友助はいつも部屋に入ると未松が帰るまで、目隠しをするルールだった。

友助はまだ眠っていた。まだ薄暗い部屋の中、未松はいつも午前1時頃に帰って行く。
ごそごそ動き、目を覚ました友助に気付いた未松は、
「今日も最高だったよ。また来週位頼むよ。」
満足気な未松に友助は、別れを今言うべきか悩んでいた。が、口から出た言葉は意に反して、
「未松さんの事は、俺が一番分かっています。これからも宜しくお願いします。」
だった。やはり、この高額なバイトに理性が負けてしまった様だ。未松は、
「うちの会社の株が最近上がってね。会社からの報酬も結構来たんだよ。」
と言って、未松は友助に10万円を手に握らせた。
目隠ししたまま、札を数える友助。いつもより多い事に気付き、
「こんなに頂けません。いつも通りで結構です。」
と断った。断った理由は、このままずるずるとこの道に入りそうで怖かった事と、終わりを言いだし難い事だった。しかし、未松は
「いやいや、こんな事は君以外に頼めないからね。出会い系でも君以外はさっぱり。」
両手を上に向け、駄目だみたいなポーズをとった。

突然友助の携帯が鳴った、この音はメール?友助は全く無視していた。未松は、
「出なくていいのか?」
とメールである事に気付かない様子。メールは着信音がすぐに切れるので、電話ではないと気付いて貰えると確信していた。
「なんだ。メールか。女か?女もいいが、私から去って行かないでくれよ。」
笑いながら未松は言った。友助はマジでやばいと思った。女がいても来いと言う事は、こいつが死ぬまでか?金はいいが、この行為は精神的にも疲れて来た頃だ。やはり、今日、しかもタイミング良くメールが来た今しかない!友助は決心した。
「すみません、未松さん。もう、俺、これで終わりにしたいのですが・・・。今のメールも彼女だから。」
友助はとっさに、さっきのメールを彼女にしてみた。

未松が着替える手を止めて、ゆっくり振り返った。友助には見えないが、その顔は、少し怒っている様にみえる。が、財布を手にすると、
「なんだ、おねだりか?まだ金が足りないのか?そんなもん、言えば増やしてやるよ。」
そう言ってさらに5万円を握らせた。友助は必死に問い掛けた。
「何故、俺なんですか?また探せばいいじゃないですか?」
その答えは聞くべきではなかった。
「君が今までで一番良かったからさ。君は私の事は知らなくても、私は君の事を知っている。ジャパン・データ・ソフトの社長の息子って事もな。私も携帯使わせて貰ってるよ。」
と言って、携帯を見せる未松。もちろん友助には見えないが。友助は困惑した。何故知っているんだ?お互い何も明かしていないのに。俺は少し亜由美に聞いたが・・・。
「またゆっくり話そう。」
そう言って未松は部屋を後にした。何故知っている?どちらにせよ、もう一度きちんと話をしないとやばそうだ。

「今日は15万貰ったからいいか。」友助はつぶやいた。そして、亜由美の言葉が浮かんで来た。そうか、社長の家に養子に行ったんなら、次期社長?もう少し貰えそうだ。この件もだが、借金が大問題の友助に、「何故、自分の事を知っている」の解答は見付からなかった。
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by deshi-mie | 2005-06-20 11:56 | 小説 第一章