パダワンとはスターウォーズに登場する戦士で、修行中の身の戦士の事です。私の仕事の車に関係する”ガレージ”を付け、初心に返る意味で、屋号にしてます♪


by deshi-mie
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

カテゴリ:小説 第一章( 10 )

10. 計画

木村は社長室にいた。また経費の件で呼ばれたのだった。
「それじゃ、そう言う事で頼んだよ。皆に言い聞かせてくれ。君しか出来ないんだよ。」
いつも同じような事ばかりなので、最近はほとんど聞いていない。
「ところで社長。私の話、由香さんにして頂けました?」
いきなり本題に入った。
「ああ、その件ね。由香は昨日お見合いしてね。相手はジャパン・データ・ソフトの成田君だよ。知ってるだろ?息子だよ。君には残念だが、結婚すれば開発費もあちらから出るから、君も思う存分開発に取り組めるぞ。」
そう言って満足そうに笑った。
「それって、政略結婚じゃないですか。由香さんが可哀相ですよ。」
善人ぶって木村が言った。
「心配いらんよ。二人とも意気投合して、結婚を前提に付き合う事になったんだ。」
一番聞きたくない事を聞いてしまった。俺の計画、俺の計画。心の中で木村は叫んでいた。計画を邪魔された怒りでいっぱいだった。
「そうですか。それでは仕方ありませんね。」
そう言って社長室を後にした。それからトイレの大便器の蓋に座り考えた。
この計画を成功させるには・・・。
計画を復帰させる新たなこの計画の始まりは、実は少し前の別の事がきっかけで、既に考えていた。
「ようし見てろよ。早速計画は実行だ。フッフッフッ。一石二鳥じゃないか。俺を甘く見るなよ。」
怪しげな笑みを浮かべて、木村は席に戻った。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 12:57 | 小説 第一章

9. お見合い

都内の料亭で裕介と由香のお見合いは開かれた。
「後は若いもの同士でね。」
お決まりの文句だ。二人はお決まりに庭園を歩く。

「すみません。親が勝手にお見合いなんか組んじゃって。彼氏とかいるんじゃない?」
友助が気さくに話し掛ける。
「いえ。今は彼氏もいないの。親がうるさくって。」
お見合い前とは友助に対する感情が微妙に違う由香。何度か逢った事はあったが、話すのはほとんど初めてで、顔もいけてるし、今は彼氏もいないし、お付き合いもいいかなと思っていた。バッグ目当てで承知したお見合いだが、別に親に従ってる訳ではないと、自分になりに解釈していた。
「友助さんは彼女とかいないの?」
気になって由香が問いかけた。
「今はいない。それより、正直俺って相手にならない?」
友助もまた、最初は未松から逃れる為の口実だったが、今は由香の綺麗な容姿とかわいい言葉遣いに惹かれていた。正直、亜由美よりいいと思っていた。
「そんな事ないわ。まだ良く分からないけど・・・。ちょといいかなって。」
言った後で少し照れた仕草の由香も、また友助にはキュンときた。

メル友の亜由美もちょっといいと思ったが、やっぱりこっちの方がかわいいし、金も掛からなそうだし、と言うよりもおごってくれそうな気がした。ついでに借金も・・・。
前の彼女がトラウマになりかけていた。自分も社長の息子だと見られている事など全く考えていなかった。頭の中で、悪魔がG.O!サインを出した。
「じゃあ、付き合ってみようか?」
友助もかなり照れた風に言った。
「うん。」
言葉にハートマークが付くほどかわいい返事に、本気で友助はダウンしそうだった。
「じゃあ俺、親父に報告して来るよ。」
友助は、由香の気が変わらないうちにと、親達がいる部屋へ向かった。

「おしっ!」
由香は元々気が強い女。今日はちょっと女の子チックに振舞ってみた。
作戦勝ちである。さすが親子。
友助も思い通りに事が運んで、どっちもどっちだった。
しかし、この結果がこれから起こる事件のスイッチだった。
 
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 12:54 | 小説 第一章

8. 占い師

またいつものホテルのロビー。
友助は相変わらずの格好で待っている。
メールを知らせる音がする。未松だった。
「1112」とだけ書いてある。いつも通りエレベーターで上がって行く。
「今日が最後だ。今日が最後だ。」
ぶつぶつ独り言を言いながら上がって行く。

「絶対言うぞ。断るぞ。でも何て言おう?この前は彼女って言っても動じなかったしな。」
また携帯が鳴った。
親父からのメールだった。
「言い忘れていたが、来週の日曜日はお見合いだ。用事を入れるなよ。たまには顔を出しなさい。」
友助は意味が解からなかった。お見合い?俺が?何で?疑問符ばかりが頭を過ぎる。
その中で、ヒラメキの電球が点いた。
「これで行こう!」グッドタイミングの親父からのメールに感謝した。友助が部屋の前に着いた。

大きく息を吐いて深呼吸し、ノックをした。
静かにドアは開き、友助は中に入って行った。
「さあ、目隠しだ。」姿の見えない未松の声だけがする。
いつも、部屋は真っ暗。未松が目隠しを後ろ向きで渡し、友助が目隠しをした後で未松は振り向く。
未松は既にシャワーを浴びた後だった。
「話もあると思うが、まずは仕事だな。」
そう言って友助の服のボタンを外し始めた。
友助は、今回までの辛抱だと自分に言い聞かせていた。金も必要だし、なにより綺麗に終わらないと、危ない気がしてならなかった。

未松は友助のGパンを下ろし、そこに顔をうずめた。
そして、友助の手をつかみ、自分のガウンの中へ入れた。
「今日も楽しませておくれよ。」
未松が気持ちを抑えきれない様子で囁いた。
二人はベッドに入って行った・・・。

数時間後、またいつもの時間になって、未松が服を着始めた。
友助は今日は寝なかった。寝ている間に帰られたら終わりだからだ。
「未松さん。俺、今度お見合いするんです。それで前にも言った様に、終わりにしたいんです。お願いします。解かって下さい。」
友助は、必死に頼んだ。
「友助君。前回君に言われて考えたんだが、私の知り合いの会社に来ないか?君のお父さんの会社はもう長くないよ。給料は沢山用意出来ると思う。君を近くに置いておきたいんだ。私の正直な気持ちだ。私の正体も分かるよ。どうだね?」

意外な返答に友助は戸惑った。スカウト?俺が社長の息子と分かっていて?しかも会社は長くない?なんだそりゃ?友助の頭の中は、またも疑問符だらけになった。どういう事だろう?俺って囲われるって事?ますます逃げられないじゃないか。しかし、本当に潰れたらもっとやばい。借金が払えないじゃないか。
親の事より自分の借金。自己中心的な友助だった。

「何故、うちの会社が長くないんですか?今急成長中ですけど?」友助は問いかけた。
「私の知り合いの占い師が危ないって言ってるんだよ。」
未松は薄笑みを浮かべ答えた。そして、
「今のうちに私の所に来れば、君は助かるよ。君を不幸にしたくないんだよ。もう一つ、お見合いも止めた方がいい。悪い結果になる。君は今のままでいいんだ。」
「え、占い師?それだけですか?そんなもん当たる訳ないでしょ。お見合いもします。もうあなたとは逢いません。でも今日の分までは頂きます。」
友助は半ギレしながら、でも今日のバイト代は請求する。我ながら良く言えたと思った。
後は未松の返答次第。

「解かって貰えないか。」未松は残念そうに呟いた。
友助は目隠しをしているので、未松の表情も行動も読めない。このまま殺されたりしないよな?圧倒的不利な立場に気付き、少し後悔している。
「きっと後悔するよ。この占い師は呪いもかけれるんだよ。助けて欲しかったら、いつでも来なさい。」
そう言って未松は部屋を出かけた。

「あなたは一体誰なんです?本当は何者なんですか?未松ってのも偽名じゃないんですか。」友助が質問で呼び止めた。未松は優しく言った。
「お互い何も話さないのがここのルールだろ?まあいい。それじゃ、これだけ見せてやるが、上を向くなよ。ほら、目隠しを少しだけずらして見てみろ。」
そう言って、友助の前に何かを近づけた。上を見たら何をされるか分からない。友助はじっと差し出された物を見た。暗い部屋。だんだん目が慣れて来た。それは免許証だった、未松の両手の指で、名前以外の所は隠してあった。
「もういいだろ。私は正真正銘未松だろ?」そういい残して、未松は部屋を出て行った。
「殺されなくてよったぁ。本当に未松だったな。しかしなんだよ。呪い?んなもんある訳ないじゃないか。」
友助は少しほっとした。が、それもつかの間だった。
「あー!!あいつ金置いていってねーじゃん!」
いつも以上に疲れたが、今日はただ働きの友助だった。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 12:48 | 小説 第一章

7. 誤算

「この携帯の特徴はですね。」
友助はショップでお客に商品の説明をしていた。
そこへ友助の携帯が鳴った。
接客中は無視している。お客様第一がモットーである。
音からしてメールらしい。
「それじゃ、今日はカタログもらって帰ります。」

お客が帰ると、友助はメールを確認した。亜由美だった。あれから何度かメールは来るものの、まだ逢う約束はしていない。何より未松との事がまだ片付いていないからだ。
あれから1週間。全く未松から連絡が無い。そろそろ諦めてくれたのかな?いや、そんなに物分りがいいはずがない。そうだ、俺の親父の事も知ってたな。なんでだ?
友助は今日まで全く忘れていた。のんきな奴である。
「あ~ぁ。どうしようかなぁ。」
色々問題を抱えて面相くさくなっている友助に圭太が尋ねる。
「友助ってさ、男の俺から見てもなかなかかっこいいのに、なんで女いないの?作んないの?」人の苦労も分からずに気楽なやつだぜと友助は思った。
「ん~。今ちょっといいなって思ってるのがいる。」
「ほんとか?誰だよ?俺の知ってる奴か?」
いちいちうるさい奴である。
「いや、知らないよ。俺もこないだ逢ったばっかだもん。」
仕方なく返事をした友助に、またメールが届いた。未松だった。
「今日は逢えないか?」メールにはそれだけ書いてあった。友助は行きたくなかったが、話をしないと終わらないと思い、逢う事にした。

横ではまだ圭太が何か話しているが、それどころではないので、全く聞いていない。
「で、どうなんだよ?」圭太が聞いた。
「あ、ごめん。またバイトの依頼があったから聞いてなかった。」
「おい、いったい何のバイトだよ。この間はホストみたいなもんって言ってたケド。幾ら貰えんだよ。」
本当にしつこい奴である。
「そのうち教えてやるよ。」
教えるつもりもないが、とりあえずこの場をしのぎたい友助だった。

その頃木村は会社のエレベーターで由香と乗り合わせていた。
偶然ではない。由香の帰りの時間に合わせて待ち伏せしていたのだ。
木村が話し掛ける。
「社長から聞いてると思うけど、今日あたり食事でもどうかな?」
昼間の父親の話で、さらに悪条件になったとは知る由も無く、気軽に話し掛ける木村に、
「私、今度お見合いしますので、変な噂が流れると困りますので。」
木村は動揺した。結婚!?そんな話は聞いてないぞ。木村は動揺して、お見合い=結婚と思い込んだらしい。
「いつ決まったんですか?相手は誰ですか?」
由香からしてみれば、答えたくもなかったが、これでこの人も諦めてくれるのではと思い、
「ジャパン・データ・ソフトの社長の息子さんです。」
エレベーターが一階に到着した。降りて行く由香をエレベーターの中から見送る木村。
ショックを隠し切れない様子。
木村が降りないまま、エレベーターの扉が閉まった。
「それじゃあ、俺が社長になれないじゃないか。由香と結婚しないと駄目なんだよ。俺はこの会社のトップになるんだ。お前は俺の嫁になるんだ。ちぇ、あの社長も役に立たないなぁ。それに・・・。」
エレベーターの中で、木村は意味深げに呟いた。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 12:30 | 小説 第一章

6. 作戦

パソコンが騒然と立ち並ぶ部屋。その部屋の窓際に木村はいた。
木村の勤める会社は、最近急成長中のベンチャー企業で、大容量データ転送システムを扱う企業だ。
友助の父親の会社、ジャパン・データ・ソフトと技術提携しており、この会社のシステムをジャパン・データ・ソフトが独占契約した事によって、現在の携帯電話の中では、最先端をいっている。

今までのデータ通信では容量が足りなかった物を、このシステムを使えば、DVD並みの映像と音を送る事が出来る。携帯で、バーチャル5.1chサラウンドも楽しめる、世界初の携帯が誕生したのだ。
当然、市場での売上も、この携帯のお陰でジャパン・データ・ソフトが馬鹿売れし、あっという間に業界のトップにのし上がった。木村は、このシステムの開発チーフで、去年の暮れに莫大な契約金でヘッドハンティングされたのだった。

しかし、技術開発は日進月歩。もう他社がそれの上を行く技術を開発しているとの噂もあった。少し遅れをとっているこの会社には、開発資金が大手よりも少なく、なかなか開発が進んでいないのも現実だった。
木村は下からの開発資金増加と、上からの新商品早期開発の間に挟まれている状態だった。そんな木村がデータをチェックする横を、秘書の南城由香(なんじょう ゆか)が通った。彼女はこの会社の社長の一人娘である。ちょっと気が強いが結構な美女で、社内では彼氏候補に手を上げる者が多数いるが、木村もその一人だった。
木村は、社長直々にヘッドハンティングされた事で、良く社長と食事も一緒に行く仲だった。そこでは、遠まわしに娘の話を出し、密かに婿に立候補していた。由香もまた、父親から話だけは聞いていたが、木村をそんな風には見ることが出来なかった。悲しいかな、恋愛対象外だったのだ。

その由香は一番奥の社長室に向かっていた。
「失礼します。」ノックをし、中に入ると、社長である父が待っていましたとばかりに話し始めた。
「おお由香。お前お見合いしてみないか?」
突然の事に
「いえ、まだ私は結婚するつもりはありません。それにお見合いだなんて・・・。」
由香はびっくりし、また木村の事かと思った。
「なんだお前、好きな男でもいるのか?木村はイマイチみたいだったが、今度は気に入ると思うぞ。」
由香の予想と違い、木村ではなかった。誰?由香には想像がつかなかった。
「お前も知っていると思うが、ジャパン・データ・ソフトの友助君だ。どうだ?いい男だろう?ん?仕事も出来るらしいぞ。」
こちらの会社には、携帯ショップの一店員とは知らされていないらしい。由香も、会社の付き合いで何度か一緒に食事をした事があったが、あまり話した事もなかった。
「そういう問題ではありません。まだ結婚したくないんです。」
由香は25歳。仕事や遊びが楽しい彼女は、結婚の事など全く考えていなかった。
「実はな、これは私から先方にお願いした事なんだ。お前も知っていると思うが、うちには開発費が無い。木村からも経費を増やすようにひつこく言われているんだ。あちらと完全に手を組めば、向かう所敵なしだ。世界だって狙える。一度逢ってみてくれないか?」
由香は怒りに満ちていた。親ともあろう者が会社の為に娘を売っていいのかと。ドラマじゃあるまいし。馬鹿げていると。しかも木村まで関係しているのかと。
「お断りします。私はどうなってもいいんですか?あなたは社長である前に私の父親でしょう?そんな話お断りして下さい。」
ヒステリックに由香が言った。
「それじゃ、この会社がどうなってもいいと言うのか?私からお願いしたんだ。せめて一回でもいいから逢ってくれ。頼む.」
そう言って頭を下げた。
「一回でいいのね?本当に一回よ!絶対断ってよね。バッグも買ってよ。」
どさくさにまぎれておねだりもするしたたかな由香は、今現在、彼氏もおらず、気になる男もいない。初めて頭を下げる父親に一度位協力してもいいかなと思った。
「有り難う由香。本当に有り難う。助かったよ。バックでも何でも買ってやる。本当に有り難う。」
そう言って泣きそうな顔で由香に礼を言った。
「それじゃ、詳しく決まったらまた教え下さいね。」
そう言って部屋を出る由香。ちょっとお父さんてかわいいと思い、口元が微笑んでいた。
が、木村を見つけるなり、きつい目に変わった。

一方部屋の中では父親が、ドアが閉まるなり、泣きそうな顔から笑みに変わっていった。
父親の作戦勝ちのようである。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 12:22 | 小説 第一章

5. 何故?

数時間後、ベッドの脇で服を着る未松の姿があった。
友助はいつも部屋に入ると未松が帰るまで、目隠しをするルールだった。

友助はまだ眠っていた。まだ薄暗い部屋の中、未松はいつも午前1時頃に帰って行く。
ごそごそ動き、目を覚ました友助に気付いた未松は、
「今日も最高だったよ。また来週位頼むよ。」
満足気な未松に友助は、別れを今言うべきか悩んでいた。が、口から出た言葉は意に反して、
「未松さんの事は、俺が一番分かっています。これからも宜しくお願いします。」
だった。やはり、この高額なバイトに理性が負けてしまった様だ。未松は、
「うちの会社の株が最近上がってね。会社からの報酬も結構来たんだよ。」
と言って、未松は友助に10万円を手に握らせた。
目隠ししたまま、札を数える友助。いつもより多い事に気付き、
「こんなに頂けません。いつも通りで結構です。」
と断った。断った理由は、このままずるずるとこの道に入りそうで怖かった事と、終わりを言いだし難い事だった。しかし、未松は
「いやいや、こんな事は君以外に頼めないからね。出会い系でも君以外はさっぱり。」
両手を上に向け、駄目だみたいなポーズをとった。

突然友助の携帯が鳴った、この音はメール?友助は全く無視していた。未松は、
「出なくていいのか?」
とメールである事に気付かない様子。メールは着信音がすぐに切れるので、電話ではないと気付いて貰えると確信していた。
「なんだ。メールか。女か?女もいいが、私から去って行かないでくれよ。」
笑いながら未松は言った。友助はマジでやばいと思った。女がいても来いと言う事は、こいつが死ぬまでか?金はいいが、この行為は精神的にも疲れて来た頃だ。やはり、今日、しかもタイミング良くメールが来た今しかない!友助は決心した。
「すみません、未松さん。もう、俺、これで終わりにしたいのですが・・・。今のメールも彼女だから。」
友助はとっさに、さっきのメールを彼女にしてみた。

未松が着替える手を止めて、ゆっくり振り返った。友助には見えないが、その顔は、少し怒っている様にみえる。が、財布を手にすると、
「なんだ、おねだりか?まだ金が足りないのか?そんなもん、言えば増やしてやるよ。」
そう言ってさらに5万円を握らせた。友助は必死に問い掛けた。
「何故、俺なんですか?また探せばいいじゃないですか?」
その答えは聞くべきではなかった。
「君が今までで一番良かったからさ。君は私の事は知らなくても、私は君の事を知っている。ジャパン・データ・ソフトの社長の息子って事もな。私も携帯使わせて貰ってるよ。」
と言って、携帯を見せる未松。もちろん友助には見えないが。友助は困惑した。何故知っているんだ?お互い何も明かしていないのに。俺は少し亜由美に聞いたが・・・。
「またゆっくり話そう。」
そう言って未松は部屋を後にした。何故知っている?どちらにせよ、もう一度きちんと話をしないとやばそうだ。

「今日は15万貰ったからいいか。」友助はつぶやいた。そして、亜由美の言葉が浮かんで来た。そうか、社長の家に養子に行ったんなら、次期社長?もう少し貰えそうだ。この件もだが、借金が大問題の友助に、「何故、自分の事を知っている」の解答は見付からなかった。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 11:56 | 小説 第一章

4. ルームナンバー

ホテルのロビー。にこやかに話す亜由美の携帯が鳴った。
楽しいひと時の中、面倒くさそうに携帯に出る亜由美。
「もしもし。あ、未松さん。え、もうすぐ着くの?そう・・・。分かりました。はい、それじゃ。」
ちょっとブルーな感じの亜由美が、仕方なく言った。
「もうすぐ来るから、もう帰っていいって。私も久々会いたかったなぁ。」
ちょっと寂しそうな亜由美と、複雑な気持ちの友助。
「一緒に待ってればいいじゃん」
友助が引き止める。
「ううん。未松さんが着く前に帰っておいてって。仕事の話だからって。」
残念そうな亜由美。
「今度連絡ちょうだいよ。」
友助から言われて、亜由美の顔に、少し笑みが戻った。
「うん。それじゃ、また。」
亜由美は軽く手を振り、ホテルの外へ消えて行った。

それから二十分位経った頃だろうか、ホテルのボーイが友助に近寄ってきた。
「失礼致します。成田友助様でしょうか?」
友助は、また特徴で分かったのかと、自分の格好を見回した。
「はい。そうですが。」
今度は何だとばかりに答えた。
「未松様より伝言です。」
と言って、ボーイはメモを友助に手渡した。メモには、1205室と書かれていた。
友助は、指定の部屋へ向かった。エレベーターで部屋に向かう間、絶対、絶対今日で終わりだと言い聞かせていた。金に負けるかと言い聞かせていた。しかしながら、このバイトは、1回5万円の破格のバイト代。こんなバイトは他じゃ絶対見付からない事も分かっていた。借金の返済もある。月々9万円の返済。今までバイトを8回頑張ったが、やっぱりあと9回は逢わないと金が持たない。以前の彼女の顔が頭に浮かんでアカンベーをしている。
「くっそー!全部あいつのせいだ!!」
思わず一人のエレベーターで叫ぶ友助だった。
そうしている間に、エレベーターは12階に到着した。ゆっくりとふわふわの絨毯の上を歩いて行く。
部屋の前で大きくため息をし、ノックした。何も考える間もなく、ドアが開いた。
「待たせて悪かった。もうシャワーは浴びたよ。」
少し低めの男の声が友助を迎えた。
「失礼します。」
友助は部屋の中へ自然に入って行った。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 11:42 | 小説 第一章

3. 決断

夜の有名高級ホテルのロビー。
いかにも高そうなソファーにピンクのシャツと紫のネクタイ、色の濃いサングラスをして待つ友助。誰も気にしていないのに、こんな所でサングラスは逆に目立つ事に気付かず、ちょっとした芸能人気分で待ち合わせの相手を待っている。

そんな友助に近づく一人の女性。歳は友助より少し上の様に見えるその女性は、ロングヘアーを上でまとめて、いかにもキャリアウーマン的なスーツに身を包み、お決まりのメガネをしている。
「すみません。成田友助さんでしょうか?」
友助は顔見知りではない様で、頭に「?」が付いた感じの返事をした。
「そ、そうですが。あなたは?」
友助が本人と分かり、その女性は嬉しそうに答えた。
「良かった。やっぱり成田さんでしたね。間違っていたらどうしようかと思いました。」そう笑った彼女の顔は、さっきまでのキャリアウーマンの顔ではなく、とてもキュートに見えた。友助は訳が分からず聞いてみた。
「何故、俺が友助だと?あなたは?」
女性ははっとして、
「すみません。私、未松(みまつ)さんの元部下の望月亜由美と申します。名前も申し上げずにはしゃいでしまいまして申し訳ありませんでした。」
態度はキャリアウーマンらしく、丁寧だった。彼女は続けた。
「成田さんと分かったのは、未松さんに特徴を聞いておりましたので・・・。」
そう言ってくすっと笑った。
「特徴?」
友助はどんな自分が特徴なのか知りたかった。
「はい。いつも淡い感じのシャツに派手なネクタイで目立つのに、さらにサングラスで人目に気を使っている、ちょっと二枚目的な男性と・・・。」
まさしくビンゴである。さすがの友助も少し恥ずかしくなった。
「未松さんの方が仕事の都合で二時間ほど遅れるとの事で、私が代わりに相手をしておくようにと。」
亜由美は、結構好みである友助との対面を喜んでいた。
「結構二枚目って聞いてました。本当ですね。」
亜由美は楽しそうだが、
「何で直接連絡くれないんだろう?別に一人でも待ってるのに。」
独り言のように裕介が呟いた。
「大事な方なので、一人で待たせないようにと、暇だった私に電話があって。あ、私の家この近くなんです。未松さんとは前の会社の先輩と後輩の仲なんです。」
「前の会社?」
何でそんな人に頼むのか疑問だった。
「ええ、私も未松さんもその会社は辞めちゃったけど。」
何だか良く分からないが、遅れる事は分かった。
「ところで代わりの相手って?どんな?」
友助にとっては、未松以外はアルバイトではない事は承知の上だった。何より、未松が自分たちの事を他人に、ましてや元後輩に言うはずが無いと確信していたからだ。
「え?成田さんとのお話し相手ですよ。変な意味じゃありません。」
ちょっと困った様に亜由美は答えた。
「未松さんは必ず来るんでしょ?」
友助は仕方なく相手にしようと決めた。
「はい。未松さんは約束を守ります。きっと二時間後にはお見えになると思います。」
きっぱりと答え、続けて亜由美は質問してきた。
「失礼ですが、未松さんとはどのようなご関係ですか?」
自分から正体を明かす事も出来ない友助は、とっさに
「仕事上のお付き合いです。それと、俺と話している間は普通にしゃべって貰えないですか?名前も友助で構わないし。何か落ち着かなくて・・・。俺も普通に話すから。」
お客の未松も来ないのに、この亜由美の堅苦しいしゃべりが辛かった。さらに、今度は友助が質問した。
「未松さんとは良く逢うの?ところでいくつ?」
亜由美はあまり歳は言いたくない様子だったが、この二枚目との話のきっかけに教える事にした。
「26です。成田さん、あ、友助さんはいくつですか?」
まだしゃべりにぎこちない亜由美からの質問に、
「24だよ。それより『ですか?』なんてやめようよ。俺より年上だし。」
友助は少しにが笑いしながら提案した。亜由美は、友助の歳を聞いて、ますますラッキーと思ったのか、満面の笑みで答えた。
「うん。そうね。」
ちょっとかわいいと思ったが、お客の後輩には手は出せない。さらに、亜由美が言った。
「未松さんとは今日の電話が久しぶり。元気にしてるみたいで良かった。未松さんが結婚してしばらく経って、会社を辞めた以来かしら?当時、私達が居た会社はインターネット関連企業だったから、未松さんは発注元の会社の社長さんに気に入られて結婚したの。」
何気に言った亜由美の言葉に友助が反応した。
「え、未松さんって結婚してるの?」亜由美はまずいという顔をして、
「未松さんに、べらべら余計な事しゃべるなって言われてたんだ。『Mimatsu@』って知らない?結構インターネット業界では良く聞くけど。」
「でも何でそんな久々の君に連絡があったのかな?」
「たぶん、急に用事が出来て、一番私がここに近かったからじゃないかな?」
「それだけで!?久しぶりの相手に電話するかな?」
「未松さん、結構昔から忙しい時は私に場つなぎ頼んでたから。思い出したんじゃない?私がいるって。」
そう言って笑う亜由美。なんて人がいい奴なんだと友助は思った。そして未松が高額なバイト代を払える理由が理解できた。社長に気に入られて結婚ね。なるほど。だから金をいっぱい持ってるのかと。しかし、何故俺とあんな事を・・・?金持ちのお遊びかな?俺には分かんないな。そこで、亜由美が話を変えようと話し始めた。
「私、親が厳しくって、社会人になってから、あまり男の人とこんな所で話す機会なくって・・・。」
亜由美は少し苦笑いで話を続けた。
「未松さんとは仕事の付き合いだけど、私とは今はただの知り合いでしょう?」
友助は、ホテルのロビーでこの前振り、いったい何が言いたいのか悩んでいた。まさか未松が来るまで部屋を取るとか?二時間あるし・・・。
それは、ちょっとは嬉しいが、逆に金掛かりそうだし。その後未松の相手もある。それよりまずくないか?色々頭を巡る思いとは裏腹に、友助の予想とは違う答えが亜由美から返って来た。
「メルアド教えてくれませんか?」亜由美は何とかしてこの二枚目との関係を繋ぎたかった。
「あ、いいよ。別に。」拍子抜けした友助は、ついO.Kしてしまった。思えば、友助は年下が好きだった。しかし、場の成り行き上、アドレスを交換してしまった。
「本当は未松さんに、友助さんには手を出してはいけないって言われてたの。でも、私も今は一人だし。寂しいし。必ずメールするからね。」亜由美は嬉しそうに言ったが、友助はあまり乗り気ではなかった。しかし、このバイトに終止符を打った後、この人と遊ぶのも悪くないと思いかけていた。そう、全てはこの後が勝負だった。
さっき、バーで圭太にはあと何回かとは言ったものの、もう今日で終わりにしようと決めていた。
「君って友達いないの?あ、ごめん。そんな訳ないよね。」友助はとっさにフォローした。
「友達はいるけど・・・。親が彼氏を認めてくれなくて、大学卒業してからずっといないの。」友助も二ヶ月前に自分の親の金目当てで貢がされた彼女と別れて以来、彼女がいなかった。当然、親が金を出すほど甘い家庭ではなく、その借金のお陰で、バイトをする羽目になったのだ。
「それじゃ、一つだけ約束してよ。未松さんにはナイショだよ。」亜由美は喜んで言った。
「守ったらメールしてもいいの?」
友助は指でピースをして微笑んだ。亜由美は、絶対このチャンスを物にすると心に決めた。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 11:31 | 小説 第一章

2.アルバイト

列車事故の一ヶ月前。都内のあるエスニックバー。
二人の男がバーで携帯を片手に話をしている。

「おい、友助(ゆうすけ)。お前っていっつも携帯いじってんなぁ」
同僚の圭太(けいた)に言われながらもメールをし続ける友助。
「いくら携帯会社の息子って言ったってやりすぎじゃないのか?」

そう、友助は今や大手携帯メーカーに追いつく勢いで急成長の、携帯電話メーカーの社長の息子である。また、このメーカーの売りの大容量通信システムは、東京エリア限定のテスト通信中だが、かつて無いハード&ソフトの出現に、全国展開すれば、トップクラスは確実だった。

「うるさいなぁ。お前もやってんじゃん。いいアルバイトがあるんだよ!」
いつも言われているのでいい加減うざい様な口調で返事を返す。
「俺はメールの確認してたんだよ。誰もメールくれないけどさ。」圭太も反対に言い返す。

ここで疑問。社長の息子が何故アルバイト?そう、彼の父親でもある社長は、下積み時代が長く、人の苦労も分からない人間は人の上に立てないとの、大変立派な考えの持ち主の為、息子を都内の自社の携帯ショップに勤務させているのだった。
メーカーが自社の携帯ショップというのも、社長のアイデアだった。通信会社に任せきりではいけないと考えていた。

「しっかし、お前も大変だよな。親は金持ってんのに。」
「いいんだよ、別に。将来は俺が社長になるんだから。この調子で行くとすっげーでかい会社になるぜ。」
そう言ってメールのチェックを続けた。
「あ、俺連絡入ったからバイト行ってくるわ。」
友助がビールを一気に飲み干して言った。
「最近、お前いっつもバイトってなにしてんだよ?しかもこんな時間から。」
圭太は友助のバイトを聞いた事がなかった。
「ま、ホストみたいなもんかな?最近出会い系で見つけたんだ。結構いい金になるんだぜ。んじゃ、いくわ。」

急に振り返り、友助は付け加えた。
「んでも、最近ちょっと面倒くさくなってきたから、あと何回かでやめる。」
ちょっと危険なこのバイトに終止符を打ちたかった友助は、誰かに宣言して自分にプレッシャーを与えたかった。
金と理性とに揺れる自分に・・・。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 10:56 | 小説 第一章
騒々しい朝のホームで電車を待っている人々・・・。
毎朝、何気に過ぎてゆく朝のラッシュも、時折事件が起きる。
スリ・痴漢・列車事故。そう、この事故もただの事故で終わっていたかも知れない。
連鎖しなければ・・・。

列車待ちでホームに並んでいる人々。
ふと一人の男性の携帯が鳴った。その音を消すかのように、駅のアナウンスが列車の到着を知らせている。
ベルが鳴り列車がホームに入ってきた瞬間、列の後ろから一人の女性がゆっくり歩いてきた。前にいた数人は、「割り込みかよ」と言うような目で彼女を見つめていた。
しかし、彼女はホームがそこで終わっているのが分からないかの如く、歩き続けた。
誰も声を掛ける間も無く、彼女は電車の下へ消えて行った。

ホームでは悲鳴と混乱の中、そこはこの連続事件の最初の列車事故現場となった。
[PR]
by deshi-mie | 2005-06-20 10:45 | 小説 第一章