パダワンとはスターウォーズに登場する戦士で、修行中の身の戦士の事です。私の仕事の車に関係する”ガレージ”を付け、初心に返る意味で、屋号にしてます♪


by deshi-mie
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カテゴリ:小説 第三章( 12 )

31. 心残り 

ホテルを見張って二日目。
警察も、木村の経歴から、以前は未松という名字だった事が分かり、ホテルに張り込んでいる警官の証言で、村松達もホテルに向かっていた。
呪いのサイトの仕組みも調査の結果明らかになってきた。
警察の心理学担当の予想はこうである。
心に悩みを持つ人は、占いに頼る事がある。この先の人生や恋愛、仕事。不特定多数の人が見るサイトなので、その答えは必ずしも悪い物ばかりでは無い。誰もが見る、オープニングとメニュー画面。そこに音と画像のサブリミナルがダブルで仕掛けられており、このサイト利用者全員に暗示が掛けられていた。
しかし、潜在意識とリンクしなければ、効果は期待できない。つまり「死」である。良い答えを聞けば気分も良いが、その答えが悪かったら・・・。死んでしまいたい程悩んでいた人で、尚且つ、隠されていた主題歌を耳にしなければ行動に移さない様になっている。
リンクしていても、暗示が弱い時はこのサイトを見ながら主題歌を聴かなければ行動に移し難いが、このサイトの常習者は、主題歌を聞くだけで行動に移る。
最初の頃、携帯を見ながら被害者になる人が多かったのは、この為だった。
確立は低いが、携帯の登録数から考えると、今回の被害者の数もあり得ない数字ではないというものだった。
さらに、この最先端の通信技術で、リアリティー溢れる音と映像が、サブリミナル効果にとって有効だった。しかし何故、あの主題歌が選ばれたのかは不明だった。思いつきか、それとも何か策があっての事か。

一方友助は、昨日考え抜いて、ある動画を撮った。
部屋で友助が服を脱いで行き、全裸で色々なポーズをとる動画だった。
一人でこんな事をしていると、妙な羞恥心が出てくるが、未松の携帯を壊す為と言い聞かせた。そして肝心のウイルスはというと、由香に貰っていた。由香の会社では、当然ウイルス除去ソフトも扱っている。その為のサンプルも多数あった。
社のアイドルであり、社長の娘である由香がスッタッフから何らかの理由を付けて、データを持ち出すのは他愛無い事だった。
友助は、由香にはウイルスの研究の為と言って貰った。未だに南城家では、友助が携帯ショップで働いている事など知る由も無かった。
見合いの日以来、何度か逢っているが、いつも遊びの事で、仕事の話など全くしない友助だった。

何故ウイルスを送るだけではいけないのか?動画が必要なのか?それは、このウイルスが仕組まれたデータが保存される事により、それから徐々に携帯の中のデータを壊していくウイルスだからである。
大きい容量のデータと言えば、動画が一般的で疑われ難いし、保存後すぐに再生してもらえれば、ウイルス除去ソフトを起動させるのを、しばらくは忘れるかもしれない。
一つ不安があるのは、ウイルスが入った自分の動画が残ってしまわないかと言う事である。これが残っては実も蓋も無い。ウイルスが動き出してから、約1時間で全てのデータを壊し、自滅するウイルスだが、その前に、ウイルス除去ソフトが動き出したら、残りのデータは無事かも知れない。
もしかすると、重要な部分が壊されて、残りも機能しないかも知れない。しかし、そこは運に任せるしか無かった。その事も考えて、動画は約40分ある。
何故40分?1時間の方が安全では?携帯用の動画圧縮ソフトが無い友助からのデータは、未松の携帯では最大で40分のデータしか受信する事が出来ないからだ。由香にソフトを頼むのを忘れていた。

友助は未松にメールを打った。
「お久しぶりです。この前は失礼しました。やっぱりお金が必要になりました。バイト続けさせて下さい。これは、僕の誠意です。今日の夜まで、今から送る動画を見て我慢していて下さい。パソコンから長編の動画を送りますので、ウイルスソフトが動いていたら、止めて下さい。一旦、保存してから見ないと、通信の関係でデータが壊れるかも知れません。五分後に送信します。それでは夜に。ロビーでいつもの格好でお待ちしています。」
未松から返事が来た。
「やっと分かってくれたか。私はもうホテルの部屋にいる。仕事が終わったら来てくれ。動画楽しみにしている。」
友助は賞でも貰ったかの様に喜び、はしゃいだ。

ホテルには警察が集まっていた。正面、裏、外、いたる所に警官が配備されていた。村松が佐々木他数人を連れてエレベーターに乗る。やっと木村がフロントに用事を頼んだのである。不必要に部屋を訪ねては疑われる為、村松達はこの瞬間を待っていた。
「いよいよ終わりですね。」佐々木が笑みを浮べて言った。
「まだ逮捕するまでは気を抜くな。」最後の大詰めで、村松にも気合が入っていた。エレベーターが到着した。大勢だがゆっくり静かに廊下を歩く男達。一緒に連れて来たボーイをドアの前に立たせる。ドラマのワンシーンの様だ。ドラマと同じ様に、しかしそれ以上に緊張がはしる。

ボーイがノックする。
「すみません。フロントですが。タオルの替えをお持ち致しました。」
滞在中、木村は殆ど部屋から出ない為、ルームサービスが入る時間が無いのだ。必要な時、必要な物を頼んでいた。
ドアが開きボーイを中に入れる。その時村松が、ボーイの為に後ろからドアを抑えている、木村の腕を掴んだ。
急な事に驚き、何も出来ない木村。反対の手には携帯を握っていたが、驚きのあまり絨毯の上に落としてしまった。落とされた携帯では、例の動画が再生されていた。
警察の一人が携帯を拾い、全裸の男が写っている映像に、何だこれと言うような顔で、動画を止めた。木村は抵抗する事無く連行された。

心残りと言えば、友助との待ち合わせだった。もちろん友助は全く来る気は無いが・・・。
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by deshi-mie | 2005-06-21 12:10 | 小説 第三章

30. ウイルス

携帯ショップに着メロが響いた。友助の携帯だった。
メールである。送信者は未松。
「久しぶりに少し逢わないか?占い師の言う通りになっただろう?呪いだよ。」
まだ諦めてなかったのかよ、と思い、友助は返事を打った。
「前回、もう逢いませんと言ってあります。もう連絡して来ないで下さい。それより、もしかしたら、あなたが犯人なんですか?」
友助は率直に聞いてみた。数分後返事が返って来た。
「君はニュースを見ていないのかい?指名手配の容疑者の名前は木村だろ。私は君も知っているが未松だ。それより、今晩どうだ?」
そう、未松の言う通り、木村は容疑者という形でとうとう全国に指名手配されていた。友助は、その後のメールは無視していた。いつもは金に負ける友助だったが、由香がいることもあった。前回未松が金をくれなかったのも、理由の一つだった。またメールが入った。今度は亜由美だった。タイトルは「新情報だよ」だった。興味津々で友助はメールを読み始めた。

警察の捜査線上にも、幾つかホテルの名前が挙がっていた。そう、木村が滞在しているホテルも含まれていた。木村の部屋に残された物の中に、幾つかのホテルからDMがきていた。
既に木村が泊まっているホテルにも、私服の警官二人がホテルのフロントで話を聞いていた。そこへ数人のお客と一緒にハンティング帽をかぶり、サングラスをした男が降りてきた。その男は、フロントにいる男達が警察であると直感した様子だった。急に向きを変えて再びエレベーターの方へ歩いて行く。周りを見ていた警官の一人がその行動に気付く。
「すみません。あの方はここに泊っている方ですか?」
男を指差してフロントに聞く。
「ええ、あの方は以前から良くご利用頂いております方です。」
「良く来るんですか?この写真の男に似てません?」
そう言って写真を見せる。
「似てると言えば似てますが、お名前も木村様では御座いませんが。」
警官は返す。
「偽名の可能性もあります。名前を教えて頂けますか?」
「もう、当店をご利用になられまして、一、二年になりますので、偽名と言う事は無いと思われますが。未松様とこちらでは伺っております。」
フロントは答えた。その男は未松だった。警官は続けた。
「何をされている方ですか?」
フロントは言い辛そうだった。
「こちらでは、あまりその様なプライバシーに関するご質問にはお答え出来かねますが、コンピューター関連のMimatsu@の専務様と伺っております。」
捜査なので、仕方なく答えるフロント。違ったかという様な表情の警官二人。
「それじゃ、何かありましたら、御連絡下さい。」
そう言って、警官達は、ロビーで見張りを続けた。

一方、亜由美からのメールを読む友助。
「新情報です。この情報は前の会社の仲が良かった先輩を、会社の前で待ち伏せて聞いたのよ。苦労したんだから。あ、もちろん女の人よ。だから、今度は必ず食事に誘ってね。それで、新情報っていうのは、」
友助は目を疑った。ばかな。あり得ないと。
「新情報っていうのは、未松さんは現在独身です!と、言う事は、養子だった訳だから会社も辞めてました。半分クビ状態だったみたいよ。本当かどうか分からないけど、未松さんの浮気が原因みたい。さらには旧姓に戻ってました。今の苗字は木村さんでした。どう?なかなか良く調べてるでしょう?それじゃ、友助君。約束守ってね。バイバイ。」
約束なんてしてないじゃん。友助は思ったが、そんな事どうでもいい問題だった。
やはり、未松が犯人だと思える事実がそこにあった。その犯人かも知れない人物とメールをしている自分。もし未松が逮捕されたら、携帯の履歴か何かで、自分の事が分かってしまうかも知れない。週刊誌の写真付きの見出しが頭を過ぎる。
「緊急入手!呪いのサイトの犯人の素顔 実は同性愛者!相手の男性が赤裸々告白!!」
友助は頭を書きまくった。
いかん。ホテルのボーイにも、過去何度かメモを持ってきて貰っている。でも、いつもサングラスしてたしな。しかし、こういうのって、匿名とか写真のモザイクとかで誤魔化しても、インターネットとかで、すぐに出ちゃうんだよな。もう、俺も終わりだ。
やっぱりあいつのせいだ!友助の頭の中では、昔の貢いだ女が指でピースサインをしていた。携帯だけでも何とかならないかな。友助は考えた。物凄く考えた。何も浮かばなかった。

そんな様子を圭太が見ていた。
「お前さっきから何悩んでんの?はたから見てたら、すっげー喜怒哀楽が激しい奴みたいだぜ。」圭太が笑いながら近づいてきた。
「実はな、面倒な女がいてね、メールの内容で脅迫じゃないけど、ストーカーみたいな感じ。」
未松の事を女に例えて話す友助。
「また何か変なメールでも送ったんじゃないの?で、何か良く分かんないけど、それでどうしたいの?」
「いやね、相手のメールの内容とかをさ、逢わないで消せないかなぁなんてね。」
「そりゃ無理だろ。漫画じゃないんだから。でも携帯の機能を麻痺させる事は出来るぜ。」
友助は藁にもしがみつく心境だった。
「え、まじで?なにそれ?どうすんの?」
急に圭太に顔を近づける友助。
「パソコンのウイルスさ。携帯にウイルスを送ってやるんだよ。ただし、うちの携帯しかだめだぜ。他んトコのは基本的にパソコンと違って、ただの携帯だからな。うちの中身はパソコンその物と言っても過言じゃないからね。」
「そうなんだ。うちのは凄いんだ。」
友助は知らなかった。
「お前、本当にうちの社長の息子かよ?でも、ウイルスソフトが常駐してるからな、まずはそいつを解除してもらわないと駄目だな。」
天国から地獄に落とされる友助。そんなの外してくださいって言う方が怪しい。
「それって、どうすれば外して貰えるかな?」
いい返事が返って来ないと分かっていても、自分では何もひらめかない友助は聞いた。
「普通は頼まれても外さないな。しいて言えば。」
「しいて言えば?」
友助がまたも近くに寄る。
「よっぽど相手が見たいと思っている画像を、パソコンから送るから外してってお願いするとか。普通は携帯の写メで送って言われるけど、画像が大きいとか、動画が長いとか言って。」
そこで友助が突っ込む。
「そんなの無理だよ。俺でも分かるぜ。だってうちの携帯の売りは、大容量だろ?普通に送れるじゃん。」
圭太は呆れた顔で見つめる。
「お前、やっぱ息子じゃないな。って言うより、ここの社員じゃないだろ?大容量通信ってのは、メニュー内のサイトからの情報配信の事だよ。受け取る方。音楽とか映画とか。携帯端末側から送れるのは、せいぜいそこらの携帯の、3倍位のデータだよ。」
またまた尊敬の眼差しで圭太を見つめる友助。
「それじゃ、そのウイルス俺にくれよ。」
友助が嬉しそうに言う。
「ばーか。そんなの俺が持ってる訳ないだろ。」
一体今までの話はなんだったんだ。友助はそんな気分だった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 11:47 | 小説 第三章

29.嘘

昼のワイドショー。噂のサイトの社員であるという人物が、よくあるモザイクと変換された音声で出演していた。
高めのトーンに変換された声で、彼は淡々と話していく。知っている人が見れば、ちょっとした仕草や話し方、体の特徴で分かりそうな、いつものモザイク。

「野村じゃないか。」
木村もこのテレビをホテルの部屋で見ていた。そして、木村も気付いた。
「何で出てるんだ?」
ただの一社員にすぎない野村が、何故テレビに出ているのか疑問だった。その後のインタビューで、木村は全てが分かった。
「そうか、昨日の電話はそういう事か。」
悔しそうに木村が呟く。自分が探されている。この事実に直面した木村は、昨日の電話で沖縄にいるといった事が、不幸中の幸いであると思っていた。
この後、どうするべきか考えていた。まだ世間は、このテレビの事が自分だとは分からない。
名前も写真も出ていない、今しかここを離れるチャンスは無いと思っていた。
しかし、行く当ても無い。駅や飛行場はドラマ等でも良く見付かる場所だ。木村はテレビに影響されやすい性格だった。
金は今の会社に入る時の契約金が幾らでもある。やはり、もう少しこのホテルに居る方が安全だと考えた。
その頃、警察でも動きがあった。令状が出たのである。早速、自宅や会社の持ち物が調べられた。家には特殊な装置もあり、DVDに映像や音を加工して記録する、ソフトや機材があった。
自宅でもサブリミナル効果を使ったDVDを作成していたようだった。パソコンの中のデータは、消去されていた。もしかすると、データだけ持ち出した後、消去したのかも知れない。
どのような物を作っていたのかは不明だった。

村松達は、情報処理部からの電話で、また何か見付かったと連絡を受けていた。急いで向かう二人。今度は音響の担当者が待っていた。
「こちらもオープニングにサブリミナルが使われていました。」
そう言って音を聞かせた。CDの様な、そしてバーチャルサラウンドの迫力ある音。これもただ聴いているだけでは何も分からなかった。映像と同じ様に、分かりやすく解析内容を説明して貰う。

「このテーマ曲の中に、メッセージが入っていました。メインの曲と分離しましたので、聴いて下さい。」
そう言って、スイッチを入れた。先々月までテレビで放送されていた、人気ドラマの主題歌だった。と言っても、これには歌は入っていなかった。サビの部分の曲のみである。
人気グループを起用せず、オーディションで主題歌を決定したこの曲は、ドラマ人気もありブレイクした。
最近ではドラマも終わり、人気曲のランキングからも外れていた。いわゆる、一発屋であった。今回の事件では、その曲のサビの部分だけが使われていた。
サビが一回終わる度に、「聴いたら死ぬ時。聴いたら死ぬ時」と木村本人であると思われる声で録音されていた。サビが約十四秒だから、オープニングの時間で、二回流れる計算だ。
この声が、メインの音に練りこまれる様に挿入されており、意識的に聞く事はほとんど出来ない。
「実は、今回はオープニングだけではなく、メニュー画面のカテゴリーを選択するまでの間、メニュー画面でこの音がB.G.Mと一緒に流されていました。」
そう、ダブルトラップだった。サブリミナル効果をより浸透させる為、視覚と聴覚を使って、潜在意識に強く訴えたのであった。しかし、通常これだけでは効果が薄いと考えられる。潜在意識とリンクする事がないからだ。
映画の飲料水も、オリンピックの選手も、飲みたい、勝ちたいという思いがリンクして行動に移したにすぎない。それならば、死にたいと思っていたのか?と言う事になる。そもそも、この曲は何を意味するのか?はっと村松は思い出した。
「この曲!前田さんの携帯の着メロだ。」
皆が振り返った。
村松は、以前前田に会った時の、前田の携帯の着メロを思い出した。
「もしかすると、この曲が流れたら自殺してしまうんじゃ。」
佐々木の推理は決して的外れでは無かった。しかし、それだけで人が死ぬとは思えなかった。

犯行の仕組みが明らかになって行く。村松はこの事件の終わりが近いと感じていた。
「よし、木村を探すぞ。」
未だ居場所が分からない木村。しかし、村松には自信があった。南城から木村が沖縄にいると言った事を聞いていたからだった。沖縄。それは木村が言った嘘である。しかし既に警察は、沖縄での捜査に力を入れていた。木村にとっては好都合であった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 11:19 | 小説 第三章

28. 社外秘

村松達は木村の家にいた。当然ながら彼はいなかった。
一体何処へ行ったのだろうか。こういう時は大体実家にも近づかないのが当たり前である。
会社でもあまり親しい友人が居なかった為、村松達には、探すあてが無かった。
サブリミナルという、特殊な事件だけに、今後、再度犯行に及ぶ可能性も少ない。それに、まだ容疑者であって、犯人と断定出来た訳でも無いのだ。本当に休暇を取っているだけかも知れない。
「今回の情報は最有力だったのに、もうネタ切れか。」
佐々木が意気消沈して言った。
「よし、何とか令状を取って、木村の近辺を捜査するんだ。」
今度こそと、何度も行き詰まった村松が気合を入れる。
二人はまず、木村の交友関係から何かを掴もうと、捜査を始めた。

その頃木村は、都内の有名高級ホテルにいた。都内でトップのこのホテル。以前、友助が未松との待ち合わせに使ったホテルであった。そこは、リゾート感覚に包まれ、言ってみれば、木村にとってのオアシスだった。木村はたまにここで、心と体を癒していた。
しかし今回は、最初にサイトの事がマスコミに報道されてから、身の危険を感じて来ていたのだった。
「realのサイトに絞ったのはまずかったな。」
木村はぼそっと呟いた。あのシステムがあってこその今回の計画だったが、つい本命のrealだけを狙ってしまった。事故が増えれば証拠も増え、サイトが怪しまれるのは当然だった。
しかも、オープニング画像が怪しまれれば、関わった人間は自分しか居ない。
しかし、こんなに早くばれてしまうのは木村には以外だった。そして、こんなにも長期間事件が続くのも予定外だった。結果、多数の人が死亡する事件へと発展してしまった。
「すぐに終わるように時期を選んだんだが・・・。」
木村には、今でも続いている事故が信じられない様子だった。
その反面、日本の警察もたいしたもんだと、妙に関心する木村。
本当はそれどころではないが、テレビでも自分の名前が出て来ない以上、自分が追われているのかも疑問だった。

木村は会社に電話してみる事にした。自分の部署の、部下の携帯に電話を掛ける。
電話に出た部下は、いつもと変わらない様子だった。
「あ、それならいいんだ。クライアントから連絡が無かったか心配だったんだ。」
仕事が気になる振りをして電話を切った。何とも無い様子に木村は安心した。本当にバカンスにでも行こうかと思っていた。
しかし会社では、警察からの指導により、木村を探している事は社員全員言ってはならないと通達が来ていた。木村は自分の居場所を沖縄だと言っていた。国内でバカンスは、やっぱり沖縄だろうとは木村の勝手な考えである。お土産もそこら辺で売っているので好都合だと考えた。
社内でも持ち切りのこの話題は、当然社外秘である。
しかし、どの会社にも一人位はいるであろう、マスコミに金で釣られる人間が、こっそりと取材を受けていた。
そしてそれは、明日、独占インタビューという形で放送される事となった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 11:09 | 小説 第三章

27. 休暇

村松たちは南城が経営する会社「サザンキャッスル」に着いた。
何とも単純なラブホテルの様なネーミングである。

またもや決まりきった挨拶の後、村松が質問する。
「あの噂のサイトを製作された方はこちらにいらっしゃるのでしょうか?」
南城は最近急に訪れた危機に、少々疲れ気味だった。
「ええ、おりますが。その製作チームのチーフは本日より日曜日まで休暇を取っております。」
南城の答えに佐々木が返す。
「この会社がピンチの時にですか?」
「彼はこの所忙しかったもので、この件がマスコミに取り上げられてから仕事の依頼も減ってますので、それならば今のうちにと。」
「なるほど。それでは別の方でも宜しいですが。」
村松が言った。
「開発に関わった者は数十名おりますが、担当があります。どの部門かによりますが、動画・音響・通信等。全員呼んだ方が宜しいですか?」
南城の質問に佐々木が答える。
「オープニングの画像と音を担当した方をお願いします。」
佐々木は本命を呼んで貰う事にした。南城の表情が変わった。
「オープニング?何故オープニングなのでしょう?」
南城も何故だか分からない様子。佐々木が言う。
「これはまだ未発表ですが、オープニングの動画の中に、サブリミナル効果が発見されました。現在、音は今解析中です。」
佐々木の説明に、南城はまさかと言う表情だ。
「サブリミナルですか?オープニングに?まさか!彼がそんな事をするはずが無い。」
慌てて取り乱す南城。日頃から目を掛けていた木村の事だけに、南城はこの事実を受け入れる事が出来なかった。
「その彼を呼んで頂けますか?」
村松が言った。
「その彼がチーフなんです。」
村松たちは顔を見合わせた。
「彼の名前とか住所を教えて貰えますか?」
南城は娘の由香に調べさせ、村松達に渡した。

「もう彼は帰って来ないでしょうね。」
佐々木は南城に言った。そして二人は木村の家へ向かった。
「家には居ないでしょうね。」
佐々木が言う。
「多分な。署にも連絡しておけ。」
村松は事件解決の糸口が見付かった事で、少しほっとした。毎日見えない敵を追っていた村松にとって、ここ最近では久しぶりの事であった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 11:02 | 小説 第三章

26. 効果

朝早く、村松は被害者の同僚の会社にいた。
応接室に通された村松は、出されたコーヒーを飲んでいた。いつも朝はお茶の村松は、朝からコーヒーなんていつ以来だろうと考えていた。
そこへ、ノックの音がし同僚が入って来た。まだ、事故のショックから抜けていない表情だった。それは、事故当日に会った村松に再会した事で、その時の事が思い出されたからかも知れない。

「だいぶ落ち着きましたか?」
村松が挨拶の後、声を掛ける。同僚は返事も無しに首を横に振った。
「ええっと、お名前は前田さんでしたね。」
調書を見ながら村松が話す。
「色々と調査してみたんですが、まだこれらの事故の関連性が見付からなくてですね、もう一度全てを見直してみようと言う事になったんですよ。」
これまでの経緯を前田に話す。
「ビデオを見て気付いたんですが、事故直前、前田さんは電話をしていますよね?」
前田が顔を上げて答えた。
「ええ。でも、私が電話に出て、もしもしって言った瞬間、もうあいつが歩き出したんで、私は急な事にそっちに気を取られて何も話していないんです。」
「電話が掛かって来たんですね?」
「ええ、そうです。掛かって来ました。会社からですが。すみません、電話が何か関係あるのでしょうか?」前田は疑問に思い聞いてみた。
「いえ別に特別どうって訳ではありません。前田さんもご存知の事と思いますが、皆さん携帯を持って亡くなっていらっしゃるもので、一緒に居た前田さんは何故大丈夫だったのかと思いまして。それが解決の糸口になればと。」
村松はいらぬ詮索をされないように話した。それから十分程で話は終わった。二人で応接室を出て、挨拶を交わした瞬間、前田の携帯が鳴った。
「あ、すいません。それじゃ、これで。」
立ち去りながら、急いでポケットから携帯を取り出して話す前田。村松はその後ろ姿を見つめていた。

思い違いだった。ただの電話だった。考えてみれば、これだけ携帯が普及しているのだから、事故現場で電話をしている人が居てもおかしくは無いのだ。しかし、村松は妙に引っかかっていた。世間でサイトが騒がれてから、事故は減っていた。周りの人々も気に掛けているようで、不自然に前に歩いて行く人に声を掛け、未然に事故を防いでいた。
しかし、不幸にも助からない人々も少なからず居た。助かった人たちの共通の事は、何も覚えていない事だった。全く無意識のうちに歩いていたのだと。
確実な事は、その全員があのサイトに登録していた。だが、噂の事で、全員が退会していた事も事実であった。一度登録をすれば、退会しても呪いは続くと言う事なのか?

佐々木から連絡が入った。処理部で何か分かったと。村松は急いで向かった。
佐々木は先に着いていた。
「警部。これで人が死ぬとは思えませんが、これは何かの手掛かりになると思いますよ。」
そう言って、画像処理部へ案内した。いくつものモニターや機材。村松にとっては、あまり居心地の良い部屋ではなかった。
「それで、何がわかったんだ?」
早速村松が聞く。
「これは、サブリミナル効果です。」
職員が答える。
「サブリ・・・」
村松には分からなかった。
「サブリミナル効果です。」
職員は、村松に詳しく説明した。
サブリミナル効果とは、人の意識のレベルでは認識されないが、潜在意識に届くように、特殊な音や映像を使って潜在意識を刺激する手法である。
例えば、海外での実際の話だが、ある映画の途中に、人の目では認識出来ない程短い時間、一秒の何十分の一程の時間、飲料水の画像を一瞬だけ入れると、映画を見終わった人達の何人かは、この飲料水を購入するというものだ。
また、オリンピックの選手の精神向上等で、サブリミナル効果を用いたB.G.Mが使われている事もある。海外ではサブリミナルを使った宣伝会社が多数存在すると言う。
しかし、実際この様な効果で、人が無意識に行動すると言う事はほとんど証明されていない。よほど集中して映像や音楽を聴き、尚且つ、メッセージが自分の潜在意識に呼びかける物でなければ、ほとんど効果がないと言われている。
しかし、逆に言えば、全てが当てはまれば、出来ない事はないのである。説明を聞いた村松は、ほとんど理解出来なかった。何となく分かった程度であった。
「それじゃ、今回の事故はこれでは不可能だと?」
村松が聞いた。
「ええ。これだけでは無理と言うか、不可能ですね。被害者全員が共通している事なんて占い位でしょう?しかし、メッセージ自体は死を表しています。見てみますか?」
そう言ってモニターに村松を呼んだ。その映像とは、以外にオープニングの映像だった。あの携帯離れした映像の途中に、ところ所画像が入っていると言う。
「ご覧になっても分からないでしょう?画像を集めてみました。全部で三点です。」
そう言って画像を見せた。最初は文字で「死ぬ」。そして電車の写真。最後に水泳の飛び込みシーンの写真だった。村松は聞いた。
「確かに今回の事故と関連ありそうですが、私にはとてもこれだけで、自殺なんかするはずないと思うのですが。素人考えですが。」
佐々木もそう思っていた。
「確かに先程説明しました様に、私も無理かと思います。しかし、これだけ関連がある画像、そして共通するサイト。人を動かす何かがあれば可能かと。」
「十何人もこれで死んだと?」
佐々木がそんな馬鹿なといった感じで言う。
「断定は出来ませんが、何かがあれば可能性はゼロではないと言う事です。」
自信なさそうに職員は答える。
「今、音の方も解析中ですので、何か出てくるかもしれませんよ。予想ですが。」
職員の声が小さくなる。
「まず、これを作ったソフト会社へ行こう。」
村松は佐々木に言った。二人は南城の所へ向かった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 10:58 | 小説 第三章

25. 見えなかった物

情報処理の主任が、村松達に説明していた。
「パスワードを頂きまして、このデータ取り込み用のコンピューターで分析しました。今回は、一つのカテゴリー、つまり、星座とか血液等の中の、生年月日の分のデータが解析出来ました。」主任の話に、佐々木が質問した。
「全部いっぺんに解析出来ないんでしょうか?」
佐々木の質問に、
「情報量が半端じゃなくあるもので、一つずつ解析した方が、結果的にコンピューターも早く動いて解析も進むのです。」
主任が説明する。
「で、どうなんだ?」
村松が聞く。
「残念ながら、今の所全くおかしな所は見付かりません。動画と音声を同時にチェックしていますが、いたって普通のプログラムですね。さすがに、世界初の情報量を誇るシステムですので、特殊なプログラムですが、怪しい所はないですね。」
「世界初でもプログラムをチェックする事は出来るんですね?」
佐々木が質問する。
「ええ。世界初って言いましても携帯での話しで、プログラム自体は過去に使われていた物の進化版ですので。それに、全てを読み取る訳ではなく、プログラムには法則があるんですが、その法則から外れた物を見つけています。あと、動画と音を分けて、それぞれを専門の部署でも分析しています。」
「なるほど。それじゃ、何かあれば直ぐに見付かるって訳ですね。」
佐々木は理解したようだった。村松には良く分からなかった。
「全部解析するのに、あと二日は掛かりますね。なにぶん、カテゴリーが多いですから。」
今日の所はここまでで、仕方がなかった。二人は車に戻った。

既に十何人目かと思われる、事故無線が流れた。
「一体いつまで続くんでしょうね。」
ため息混じりに佐々木が言った。村松もまた、そう思っていた。世間とマスコミの警察へのバッシング。そして、成田から託された願いもあり、村松はあせっていた。
「佐々木。もう一度全部調べ直してみよう。俺たちが見落としている事がきっとあるはずだ。」
「はい。それじゃ、もう一度被害者の近辺を当たってみます。」
佐々木もじれったかった。二人は一度署に戻って別々に行動する事にした。
「頑張ってくれ。」
村松は頼むように言った。

部屋に入ると村松は再びビデオに向かった。画面を見ながら村松は言った。
「なるほど、皆うつむいていたのは携帯を見ていたのか。色んな事実が分かってくると、見えなかった物が見えて来るもんだな。」
何度も見ていたのに、今になって分かる事実。村松はあせっている自分を落ち着かせた。
「ん?」
些細な事だが、村松は気になった。
「なんだ?」
事故が増えるに伴って、ビデオも増えたが、その中の何本かに、偶然かも知れないが、被害者の近くで携帯を取り出して、話し始める男性が映っていた。
「もしかして、同一人物か?」
身を乗り出して画面を見つめる。しかし、次のビデオは女性が携帯をバッグから取り出していた。
「思い過ごしか。しかし、女装している可能性もあるな。」
何時の間にか、独り言が多くなっていた。村松は同一犯の可能性を探ろうと、次々とビデオを見ていった。以前、同僚が飛び込んで、村松が直接質問した現場のビデオが始まった。
「これは。」
村松は被害者が飛び込む直前、携帯を取り出す同僚の姿があった。
「まさか。」
もしも、同一犯ならこの同僚が犯人かも知れない。そして、手口はこの携帯で被害者に電話をする事。
しかし、隣の同僚に電話などするだろうか?やけに不自然である。被害者は既にうつむいており、多分占いのサイトを見ているのだろう。もし、同僚が犯人だったとして、このサイトとはどんな関係があるというのか?疑問だらけで接点が見えて来ない。とりあえず、事情を詳しく聞いて判断するしかない。見えなかった物が見えてきた村松は、この男に期待をよせていた。
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by deshi-mie | 2005-06-21 10:46 | 小説 第三章

24. ブーム

ショップで携帯をいじくる友助。
「またかよ。」またまた圭太につっこまれる。もう日常的になった会話に。友助は全く気にしていなかった。由香に言われた事が気になって、あの日以来、未松の事を遠まわしに亜由美に聞いていた。
「いっつもメールばっかりで、全然逢ってくれないのね。でもいいわ。私の事を忘れていないって証拠だもんね。でも、そのうち食事でもしましょうよ。」
亜由美からのメールである。由香と付き合っている事は、亜由美には話していなかった。隠しているつもりはないが、話すつもりもなかった。由香に逢うまでは、亜由美も少し気に入っていたし、この関係が壊れて、未松の事が謎に終わってしまう事も避けたかった。
今日のメールには、此れと言って新しい情報はなかった。亜由美も昔の会社友達と、連絡し合っていなかった事もあり、電話やアドレスが変わっていたりで、なかなか情報が入って来なかった。あれきり未松からの連絡も無い友助は、別にどうでも良かったが、たまに経過を聞いてくる由香に答える為に、亜由美とメールをしていた。

「そういや、こないだの警察の人、サイトが怪しいって言ってたな。どのサイトなんだろう?」
圭太が友助に問い掛ける。
「知らないよ。噂って言ってたじゃん。」
友助が面倒くさそうに言う。
「え、知らないの?お前、テレビ見た?」
圭太が驚いたように言う。
「あれって、噂じゃなかったんだよ。警察が本当に捜査してたらしいぜ。」
友助の携帯をいぢる手が止まった。少し興味があるようだ。
「おい、どのサイトだよ。」
友助が乗り出して聞く。
「それは俺がさっきお前にした質問だよ!俺が知る訳無いだろ。」
当然の答えが返って来た。ふと、圭太は思い出した。そういえば、飛び込みが始まった頃、警察発表で、未確定だけど、占いが関係しているかも、みたいな事を言っていた事を。
友助に話すと、早速占いのサイト探しが始まった。圭太がもう一つ思い出した。
「そう言えば、あの警察の人、こちらの携帯でしか見れないサイトって言ってたな。」
「お、そうだ。そんな事言ってたな。」友助も自分の会社の携帯の事だったので、何気に聞いていた。
「それなら少ないんじゃないか?」圭太は急いで探し始めた。以外に、この携帯でしか見れない占いのサイトは、一件しかなかった。業務提携をしている所が、南城の所しかないので、当然と言えば当然である。

「さあ、いってみようか。」興奮して圭太が言う。
「ちょっとまった。」急に友助が止める。
「なんだよ?」勢いを止められた圭太が、不機嫌そうに言う。
「これ見て俺達死なないよな?」友助が心配そうに言う。
「いや、大丈夫だよ。きっと。俺達以外にも、何万人って見てる筈だよ。」
「そうだよな。でも、何かがきっかけで死ぬんじゃないのかよ。偶然俺達がそのきっかけを掴んでしまったら・・・。」友助の言葉が、圭太を不安がらせる。
「じゃ、じゃあ、どうすればいいんだよ?」どうしていいか分からない圭太は友助に助けを求める。
「二人で見れば大丈夫。か、な?」観たいが怖い友助は、自分でもどうしていいか分からなかった。
「それじゃ、観るぜ。」そう言って圭太は、占いのページを開いた。友助は目を閉じていた。そこは会員登録の画面だった。
「なんだよ。登録しないと観れないのかよ。緊張して損したぜ。」友助が言った。
「お前、緊張も何も目を閉じてたじゃんか。俺一人に呪いを掛けようとしやがったな。」
圭太がつっこむ。友助の行動は、ばれていた。
「冗談だよ。今度はちゃんと見るから登録しようぜ。」
ちなみに、携帯は圭太のである。
「よし。って俺の携帯でかよ?お前、マジで俺をはめようとしてない?」
不信感いっぱいの圭太。
「そんな事ないさ。さ、登録しようぜ。」
軽快に友助が言った。圭太は渋々登録を始めた。
「やっぱ、これってまずくない?」
今更だが、登録を完了した圭太が言った。
「大丈夫だって。よし観ようぜ。」
友助は少し楽しそうだ。
しかし、なかなかそのサイトに繋がらない。それは、圭太と同じ様に、昔の警察発表を思い出した、勘のいい世間の人々が、一斉にアクセスしているからだった。
「ちぇ。んじゃ圭太、宿題ね。」
友助が残念そうに言った。
「宿題って、俺一人で観るのかよ?」

確かに、怖いもの見たさで心霊スポットに集まる若者達みたいに、このサイトは一つのブームになっていた。
「明日一緒に見よーぜ。」
訴える様に圭太は言った。
しかし、振り返った先に、友助は既に居なかった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 10:40 | 小説 第三章

23. 新事実

署に戻った村松を同じ課の女の子が待っていた。
「あ、警部。お電話が入ってました。ジャパン・データ・ソフトの成田さんって方から。」
早速成田が連絡して来ていた。すぐに電話を掛ける村松。
「そうですか。それじゃあ、戻られたらお願いします。」
成田は外出していた。
「何でしょうね?パスワードの件ですかね。」
佐々木が期待感いっぱいの様子で言った。
「そうだと助かるんだが。」
村松もまた、期待していた。
世間では、未だに飛び込みが続いている。休憩室のテレビでも、ワイドショーではその話題だった。しかし、今日のワイドショーは少し違った。アナウンサーがテロップ片手に興奮した喋りをしていた。
「ついさっき、幾つかのテレビ局や新聞社に、匿名のファックスが送られて来ました。これがその本文です。」
そう言って、アナウンサーはファックスをコピーしたテロップを見せた。そして、解説を続けた。
「このファックスには、あるサイトが怪しいと書かれています。携帯は関係ないとも書かれています。あるサイトは、警察が調査中だと書いてありますが、現時点では、事実確認は取れていません。それでは、警察署前に中継が繋がっています・・・」
テレビに驚いたのは、捜査に当たっている、本人達だった。
「何だ?誰が情報を流した?」
佐々木はぎょっとした。もしかすると、携帯ショップで自分が言った事が原因ではないかと、責任を感じていた。佐々木は村松に近づき、
「警部。ちょっとお話が・・・。」
佐々木が小声で言った。その時、
「警部、お電話です。先程の成田さんです。」
女の子が電話を伝えた。村松が電話へ向かう。
「あ、どうも。村松です。」
愛想良く電話に出る。
「テレビは見て貰えましたか?」
えっ!と思ったが、このワイドショーのファックスの送信者が、成田だと気付いた。
「どうして?」
村松が、机の横にしゃがみこんで、小声で話した。
「私の会社を守る為だ。ばれないように、コンビニからFAXを送った。元々、うちの携帯が悪い訳ではない。パスワードも教えましょう。しかし、電話じゃまずい。」
成田は、開き直った様に話す。
「それでは、どこかでお逢いしましょうか?」
場所を決め、村松は電話を切った。
「佐々木、行くぞ。」
村松が言う。佐々木はさっきの話の続きを、車で話すのは好都合だと思っていた。

車に乗り込んですぐに、佐々木が話し出す。
「あ、警部。さっきの」
言いかけて、村松が話し出した。
「佐々木。さっきのワイドショーのファックス。」
来た。と佐々木は思った。とっさに佐々木は
「すみません。」
と謝った。
「何だ?何かしたのか?そんな事より、さっきのファックスはジャパン・データ・ソフトの成田さんだったんだ。皆にはまだ喋るなよ。」
てっきり自分だと思っていた佐々木は、村松の言葉に、不意をつかれた気分だった。そして、ほっとした。
「は、はい。」
「なんだ?冴えない返事だな。ところで、さっき謝ったのは何なんだ?」
佐々木は、言うべきか迷った。
「いえ、大した事ではないんですが、この前の一階の女の子にまだおごってないんです。」
とっさに訳の分からない出任せを言う。
「なんだそりゃ?俺に謝ってどうするんだ。変な奴だな。」
「そうですよね。」
変に愛想笑いをする佐々木。そうしている間に、約束の場所に着いた。

公園の横だった。公園のベンチに成田は居た。村松は詳細を聞いた。
「なるほど。責任転換ですね。しかし、あちらが困れば、あなたの会社も困るんじゃないですか?」
成田は契約の件に関しては話していなかった。
「いえ、私の所もあそこが居ないとまずいって訳ではないんですよ。」
本当は非常にまずいが、強がってみせた。
そして、成田は村松に一枚の紙を渡した。
「これがパスワードです。これで、そのサイトを解明して下さい。会社の運命がかかっているんです。何も出て来なかったら、やっぱり携帯が呪われているんだって、また言われます。お願いします。」
成田は頼み込んだ。
「分かりました。やってみます。でも、何も無くても恨まないで下さいね。これが原因だとは、確信はありませんから。」
そう言って頭を下げ、村松達は情報処理の主任の下へ向かった

。テレビでは、どのチャンネルもこの新しい事実を取り上げていた。そしてそれは、警察発表で、捜査の一部に含まれているとの事実に、世間の注目は南城の会社に集まった。
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by deshi-mie | 2005-06-21 10:30 | 小説 第三章

22. 責任転換

社長の成田は、今後の会社の経営について考えていた。このままだと、倒産は確実だからである。

そこへ一本の電話が入った。南城だった。また会社の調子や何やらを聞いて来るのかと、少し成田は嫌だった。いつもの挨拶も終わり、南城が本題を切り出してきた。
「来月契約更新ですが、このまま更新で良いでしょうか?」
「もちろん、お願いするつもりだが。」
南城は当然の事とばかりに言った。
「失礼かと思いますが、噂では携帯の製造が停まっていると言う話を聞いたんですが、本当でしょうか?」
「何が言いたいんだ。もう別の所を手配している。少し生産性は落ちるが。」
ちょっと怒り気味に成田が言った。
「いえ、うちも経費がないとなかなか苦しい時期ですので、契約の確認だったんですが・・・。」
南城が淡々と話す。追い討ちをかけるように、南城は言った。
「実はですね。このシステムを契約したいって所があるんですよ。もちろん、成田さんの所と契約がありますから断りましたけど。」
このシステムが無くなれば、ジャパン・データ・ソフトはそこらの普通のメーカー以下だった。
「それは、うちとの契約を切るという事か?」
驚いた成田は、不安そうに聞いた。
「いやいや、そんな事ではありません。息子さんの件もありますので、他社さんと同額か近いものであれば契約させて頂こうかと思いまして。」
「で、幾らなんだ?」
今のこの会社には、殆ど蓄えは無いが、システムを手放すわけにもいかなかった。
「昨年の15%増しです。」
「15%だと?そんな額、無理に決まっているだろう。」
「他社がその様に言って来ておりますので、成田さんとのお付き合いも考えて、10%増しでも結構ですが。」
現状を考えると、不可能だった。毎月、保守料と契約金の分割分を合わせて支払っているが、今回のそれは、かなり難しいい金額だった。この会社が立て直せれば。成田は悔しい思いでいっぱいだった。
「少し考えさせてくれ。」
「全然構いませんよ。来月の10日までにお返事頂ければ助かりますが。」
そう言って電話は終わった。

経営難のジャパン・データ・ソフトには、最大のピンチだった。
成田は悩んだ。元はと言えば、変な噂のお陰で携帯が売れなくなったのが原因だ。あの噂さえなければ。
契約の返事まであと二週間とちょっとしかない。その間に現状を打開するのは不可能に近い。しかし、やらなければ全てを失う。
成田は思出した。確か警察は、サイトが怪しいとか何とか言っていたなと。
それならば、そのサイトさえ何とかすれば、この会社は助かるかも知れない。サイトの運営は南城の所だ。南城の所が原因だとメディアが取り上げれば、他社も手を引くだろう。
そうすれば、契約は自分の所しかいないと。
南条の所の信用も落ちるが、全国展開までに何とかすれば良いと。
世間が携帯の契約さえ維持してくれれば、メーカーの成田の会社にも通話・通信料のマージンが入る。その様な仕組みになっていた。
何とか南城の方に、責任転換する手立てを考える成田は、ポケットから携帯を取り出した。
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by deshi-mie | 2005-06-21 10:23 | 小説 第三章