パダワンとはスターウォーズに登場する戦士で、修行中の身の戦士の事です。私の仕事の車に関係する”ガレージ”を付け、初心に返る意味で、屋号にしてます♪


by deshi-mie
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31. 心残り 

ホテルを見張って二日目。
警察も、木村の経歴から、以前は未松という名字だった事が分かり、ホテルに張り込んでいる警官の証言で、村松達もホテルに向かっていた。
呪いのサイトの仕組みも調査の結果明らかになってきた。
警察の心理学担当の予想はこうである。
心に悩みを持つ人は、占いに頼る事がある。この先の人生や恋愛、仕事。不特定多数の人が見るサイトなので、その答えは必ずしも悪い物ばかりでは無い。誰もが見る、オープニングとメニュー画面。そこに音と画像のサブリミナルがダブルで仕掛けられており、このサイト利用者全員に暗示が掛けられていた。
しかし、潜在意識とリンクしなければ、効果は期待できない。つまり「死」である。良い答えを聞けば気分も良いが、その答えが悪かったら・・・。死んでしまいたい程悩んでいた人で、尚且つ、隠されていた主題歌を耳にしなければ行動に移さない様になっている。
リンクしていても、暗示が弱い時はこのサイトを見ながら主題歌を聴かなければ行動に移し難いが、このサイトの常習者は、主題歌を聞くだけで行動に移る。
最初の頃、携帯を見ながら被害者になる人が多かったのは、この為だった。
確立は低いが、携帯の登録数から考えると、今回の被害者の数もあり得ない数字ではないというものだった。
さらに、この最先端の通信技術で、リアリティー溢れる音と映像が、サブリミナル効果にとって有効だった。しかし何故、あの主題歌が選ばれたのかは不明だった。思いつきか、それとも何か策があっての事か。

一方友助は、昨日考え抜いて、ある動画を撮った。
部屋で友助が服を脱いで行き、全裸で色々なポーズをとる動画だった。
一人でこんな事をしていると、妙な羞恥心が出てくるが、未松の携帯を壊す為と言い聞かせた。そして肝心のウイルスはというと、由香に貰っていた。由香の会社では、当然ウイルス除去ソフトも扱っている。その為のサンプルも多数あった。
社のアイドルであり、社長の娘である由香がスッタッフから何らかの理由を付けて、データを持ち出すのは他愛無い事だった。
友助は、由香にはウイルスの研究の為と言って貰った。未だに南城家では、友助が携帯ショップで働いている事など知る由も無かった。
見合いの日以来、何度か逢っているが、いつも遊びの事で、仕事の話など全くしない友助だった。

何故ウイルスを送るだけではいけないのか?動画が必要なのか?それは、このウイルスが仕組まれたデータが保存される事により、それから徐々に携帯の中のデータを壊していくウイルスだからである。
大きい容量のデータと言えば、動画が一般的で疑われ難いし、保存後すぐに再生してもらえれば、ウイルス除去ソフトを起動させるのを、しばらくは忘れるかもしれない。
一つ不安があるのは、ウイルスが入った自分の動画が残ってしまわないかと言う事である。これが残っては実も蓋も無い。ウイルスが動き出してから、約1時間で全てのデータを壊し、自滅するウイルスだが、その前に、ウイルス除去ソフトが動き出したら、残りのデータは無事かも知れない。
もしかすると、重要な部分が壊されて、残りも機能しないかも知れない。しかし、そこは運に任せるしか無かった。その事も考えて、動画は約40分ある。
何故40分?1時間の方が安全では?携帯用の動画圧縮ソフトが無い友助からのデータは、未松の携帯では最大で40分のデータしか受信する事が出来ないからだ。由香にソフトを頼むのを忘れていた。

友助は未松にメールを打った。
「お久しぶりです。この前は失礼しました。やっぱりお金が必要になりました。バイト続けさせて下さい。これは、僕の誠意です。今日の夜まで、今から送る動画を見て我慢していて下さい。パソコンから長編の動画を送りますので、ウイルスソフトが動いていたら、止めて下さい。一旦、保存してから見ないと、通信の関係でデータが壊れるかも知れません。五分後に送信します。それでは夜に。ロビーでいつもの格好でお待ちしています。」
未松から返事が来た。
「やっと分かってくれたか。私はもうホテルの部屋にいる。仕事が終わったら来てくれ。動画楽しみにしている。」
友助は賞でも貰ったかの様に喜び、はしゃいだ。

ホテルには警察が集まっていた。正面、裏、外、いたる所に警官が配備されていた。村松が佐々木他数人を連れてエレベーターに乗る。やっと木村がフロントに用事を頼んだのである。不必要に部屋を訪ねては疑われる為、村松達はこの瞬間を待っていた。
「いよいよ終わりですね。」佐々木が笑みを浮べて言った。
「まだ逮捕するまでは気を抜くな。」最後の大詰めで、村松にも気合が入っていた。エレベーターが到着した。大勢だがゆっくり静かに廊下を歩く男達。一緒に連れて来たボーイをドアの前に立たせる。ドラマのワンシーンの様だ。ドラマと同じ様に、しかしそれ以上に緊張がはしる。

ボーイがノックする。
「すみません。フロントですが。タオルの替えをお持ち致しました。」
滞在中、木村は殆ど部屋から出ない為、ルームサービスが入る時間が無いのだ。必要な時、必要な物を頼んでいた。
ドアが開きボーイを中に入れる。その時村松が、ボーイの為に後ろからドアを抑えている、木村の腕を掴んだ。
急な事に驚き、何も出来ない木村。反対の手には携帯を握っていたが、驚きのあまり絨毯の上に落としてしまった。落とされた携帯では、例の動画が再生されていた。
警察の一人が携帯を拾い、全裸の男が写っている映像に、何だこれと言うような顔で、動画を止めた。木村は抵抗する事無く連行された。

心残りと言えば、友助との待ち合わせだった。もちろん友助は全く来る気は無いが・・・。
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by deshi-mie | 2005-06-21 12:10 | 小説 第三章